銀魂
□空の間
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「俺達の友を」
「頼む」
――そう言って、銀時たちを送りだしてから、どれぐらい斬っただろうか?
桂は刀を振り下ろしながら、周りを見渡した。
崩れた建物の瓦礫があちらこちらに見える。
先ほどまでは岩肌が見えていた殺風景な景色だったはずが、ずいぶんと異なっている。
「いつの間にか、こんなところまで来てしまったようだ」
逃げる敵を追いかけて来た訳でもなく、夢中で戦っていると、いつの間にか戦場を離れてしまうことがある。
そんなことを考えていると、目の隅に動く物体が見えた。
「うぐっ!」
反射的に刀を振り下ろすと、呻き声とともに、どさっと傘を被った男が倒れた。
最後の一人だったのか、他に烏の姿はなさそうだ。
坂本が提案した『敵を引きつけて分断する』ことには成功したようだ。
「みんなのところに戻らないとな」
背後を振り返ると、自らが斬ってきた屍が続いている。
――この屍に沿っていけば、戻れるだろう。
屍が続く先に目を凝らすと、瓦礫の中で何かがキラリと光った。
咄嗟に、錫杖だと気付いた。
そして、錫杖の前に紫の着物が揺れて、地面に落ちていくのが見えた。
「た、高杉―――っ!!」
叫ぶ声よりも先に、体が動いていた。
錫杖を振りあげている男の背後に飛びかかり、背中から胸部に刀を突き立てた。
肉体を串刺しにしたまま斜め下に斬りつけると、傘を被った上半身が崩れ、高杉に覆いかぶさった。
「高杉!」
「……痛てエよ」
屍となった男の下から、高杉の不満そうな声が聞こえた。
「大丈夫か?」
斬った男の体をどけてやると、高杉が半身を起こした。
「大丈夫じゃね―よ。テメエが倒したその図体の下敷きになって、骨が折れるかと思ったぜ」