銀魂

□水無月の不機嫌
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今日の高杉は、不機嫌きわまりない。

いつも、さほど機嫌がよい訳ではないが、今日はすこぶる悪い。

玄関を開けて迎えに出た俺の顔を見て、いきなりむっとしたかと思うと、どかどかと上がり込んできた。

部屋に入ると、俺の顔を見上げて、「今日は、テメエにとって、めでたい日だよな!」と、怒り口調で言われた。

たしかに、今日は俺の誕生日だ。

だけど、そんな不機嫌きわまりない表情でいわれて、はい、おめでたい日です。ありがとう――と、言えるわけがない。

「貴様には関係ないではないか」と、俺も売り言葉に買い言葉で、目もあわせずに答えてしまった。

俺のその態度で、高杉の不機嫌がマックスに達したのは間違いない。

不機嫌になると、ところ構わず怒りを発散して、当たり散らすタイプと、黙り込むタイプがいるが、高杉はまさに後者である。

子供の頃から一度機嫌を損ねると、誰が優しい言葉をかけようが、食事の時間であろうが、部屋に閉じこもって、出てこようとしなかった。

その点、銀時はどんなに機嫌が悪くても食事の準備が出来たと声をかけられれば、テーブルについて、怒っていたことなど、忘れたかのように……実際、忘れていたのかもしれないが……パクパクといつものように食事をし、食べ終わったら、カラッとしていた。

それに反して、高杉の機嫌をなおす術を持っていたのは……たぶん先生だけだった……。

とにかく、高杉は昔から手がかかる子供だったのだ。

俺の態度で不機嫌マックスに達した高杉は、手に持っていた袋をその場に放り投げるように置くと、何も言わずに、奥の座敷に入って行った。

こうなっては、さすがに俺も宥めることができない。

ここは、しばらく放置しておくしかあるまい。

と、思って、台所に行って夕食の準備をはじめた。

今日は俺の誕生日ではあるが、1人暮らしの男が誕生日を一人で祝うのも気恥ずかしく、特段、特別な食材も準備していない。

いつもと大差ない料理を作るだけのつもりだったのだが、急に訪ねてきて機嫌をそこねている男に何を振る舞ったらよいだろうか?

俺は冷蔵庫を開けて、ほとんど何も入っていない庫内を見つめていた。

「さて、どうしたものか……」

ただ、そろそろ高杉が来る頃だと思って、酒は用意してある。

肴は、あり合わせのもので見繕うしかない。

高杉は、いつも急に現れるので、ちゃんとした食事をなかなか出せない。

いつかちゃんとしたものをご馳走したいとは、思っているのだが……。

機嫌を直してもらうためにも、何か高杉の好みにあわせた肴を準備したい。

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