銀魂

□雨上がり
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雨の音が耳に響く――。
見上げた空には、灰色の雲が広がり、次々と滴が落ちてきている。
桂が座り込んでいる神社の拝殿前の階段にも、水しぶきが届きはじめた。足元が濡れている。
雨の所為か、神社には人の姿が見えない。人の声が聞こえない境内には、屋根や地面を打ち付ける雨音だけが響いている。
桂は隣に座っているエリザベスを見た。
ずいぶん長い間、ここに座っていたせいか、こくりこくりと居眠りをしている。
「エリザベス、こんなところで寝たら、風邪をひくぞ」
大きな白い体を揺すると、くりくりの目が少し開いた。
桂の顔を認識すると、また目が閉じられて、寝息が聞こえてきた。
どうやら、本格的に寝始めたようだ。
桂はエリザベスを起こすのをあきらめて、自分の両膝を両手で抱えると、その上に顔を乗せた。目を閉じると、外の世界と遮断されたように、一定のリズムを刻む雨音しか聞こえなくなった。
――心音のようだな。
じっと聞いていると、桂も眠気を感じた。そのままゆっくりと眠りに落ちていった。

「小太郎、小太郎」
遠くで、呼ばれる声がして、桂は目をゆっくりと開けた。
先ほどまで、雨が足元を濡らしていたのに、今は落ちてくる滴さえ見えない。
――雨が止んだのだろうか……。
桂は、空を仰ぎ見ようと顔を上げると、そこに高杉の顔があった。
「晋助……?」
「濡れちまうぜ」
高杉の頭の上に傘が見える。
止んだと思った雨は、高杉が差し出した傘に遮られていたようだ。
高杉の肩に雨の滴が落ちている。
「晋助、お前が濡れるではないか」
桂の言葉に、一瞬、笑みを浮かべると、高杉の目が細められた。
「全て終っちまったぜ」
「そうか……」
桂はゆっくりと立ち上がると、高杉の傘の中に入った。
血のにおいがする。
間近で見ると、高杉の着物が血に染まっているのが分かった。
高杉自身の血と、返り血なのだろう。
「晋助……お前は……」




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