銀魂
□こいのぼり〜その後〜
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「終わってしまったのか……」
攘夷活動を行うために、数日間、かぶき町を離れていた。その間に、五月五日の節句は終わってしまったようだ。
屋根の上で悠々と泳いでいたこいのぼりの姿がなくなっている。こいのぼりに執着があった訳ではない。忙しい毎日が続いて、季節の移り変わりを感じる余裕さえなくなってしまっている。そんな自分の生活に、多少なりとも侘しさを感じて、寂しい気持ちになった。
玄関を入ると、男の声が聞こえた。
「やっとお帰りかい。遅くて、もう帰っちまおうかと、思ってたとこだぜ」
横柄な態度は相変わらずだ。
「高杉、勝手に家に上がるなと言っているはずだ」
「てめ―のとこの鍵が緩いからな。簡単に開いちまったぜ。それよりも腹が減ったから、早く飯にしようぜ」
そういいながらも、食卓の上に広げられている酒や肴には、既に箸がつけられている。
「貴様、不法侵入で訴えられるぞ」
「指名手配中のてめエが、どこに訴えるつもりだ?」
「主がいない間に、勝手に食料を食うな」
「てめエの侘しい食料には手を出してね―よ。もう少しまともなモノを食ったらどうだ」
「俺の食事に文句をつけるのなら、豪勢な食事を出してくれる女のところにでも行ったらいいではないか」
「ククク、てめエ、俺に惚れすぎてるんじゃね―かよ」
「な、なにを!」
「今の顔を鏡で見てみろよ。俺に行ってくれるなと、言ってる表情そのものだぜ。正直に、俺に、ここにいてくれと、言ってみろよ。お前さんが望むようなことをしてやるぜ。して欲しいんだろうが」