銀魂

□おぼろ月夜の満開の桜
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〜〜 1. 冬の劣情 〜〜


静かだ――

音がしない――

障子に映る影が、音もなく静かに揺れている。


隣で眠る男の寝息だけが、室内に聞こえている。
桂は隣の男の眠りを妨げないように、そっと体を起こし、障子に近づいた。
ちらちらと見える影――。
障子を少し開くと、冷たい空気が入り込んできた。
黒い髪が風に揺れる。
片手で髪を押さえながら、冷たい外の空気を浴びた。

冷たい小さな塊が顔に当たって、溶けていく。

雪――。

揺れていたのは、空から舞い降りてくる雪の影だったのか――。
両手を外に突き出してみた。
降り注ぐ小さな塊が、掌に乗った瞬間に体温で溶ける。

冷たい空気と雪が、火照っていた体をゆっくりと冷ましていく。

――冷たくて、心地いい。

桂は、しばらく障子を開けたまま、ゆらゆらと舞い落ちる雪を眺めていた。


「くしゅん」

寝ていたはずの男のくしゃみが、聞こえた。
振り返ると、眠たそうな目をうっすらと開いて、こちらを見ている。

「高杉、目が覚めたか?寒いと思ったら、雪が降ってきている」

「そうか」

高杉は半身を起こすと、桂の背後に見える少し開いた障子からの雪を一瞥した。




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