銀魂
□川面に咲く
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「ヅラぁ――!場所間違えるなよ――」
手を振りながら人混みの中に紛れていく神楽を見ながら、桂は今日の待ち合わせに持って行く神楽が好きそうな食べ物は何にしようかと考えていた。
今日は年に一度のかぶき町の祭りが開催される日で、夜には祭りのフィナーレとして花火が打ち上げられる。
かぶき町らしく、華やかで賑やかな開催を主旨としていることから、江戸中の人が一緒に騒ごうと、このかぶき町に集まってきている。
「それにしても人が多いな。エリザベス」
『お祭りですからね』
人混みを掻き分けながら歩いている桂に、エリザベスがプラカードを掲げて返事をした。
「祭りと花火が開催されるとあれば、江戸中の人がこの河川敷に集まってくるな」
桂は花火鑑賞のために、早くから場所取りを始めている河川敷の大勢の人の方を見た。
『場所取り大丈夫でしょうか?』
「今日は銀時が場所取りをしてくれているそうだ。あいつが、真面目に場所取りをしているとは思えないが・・・」
桂は、先ほど神楽から聞いた「銀ちゃんが、どこよりも大っきい花火が見える場所で待ってるから、ヅラ、お前も一緒に見に来いよな」という言葉を思い出しながら、「今ごろ、待ちくたびれて、大きい花火が見える場所を離れているかもしれないな・・・」と苦笑した。
路地を曲がると、人混みも消え、いつもの静けさが広がっていた。
「エリザベス、急ごうか」
人混みを離れて、ほっと安堵しながら、エリザベスに話しかけたとき、突然、背後から腕を掴まれた。
「!!」
『桂さん!!』
桂が脇の刀の柄を握り締め、抜きかけたところを背後の男に押さえられた。
「ここで抜くのは無粋でござろう」
囁くような低い声が耳元で聞こえた。