銀魂

□恋慕
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船の揺れにバランスをとりながら、エリザベスの衣装に身を包んだ桂は眼下の居室を見下ろしていた。
数日前、赤く光る生き物のような刀を持った男に、突然、切りつけられた。
あまりの速さに応戦することすらできなかった。男は桂が倒れたのを見て、死んでしまったと勘違いしたのだろう、髪を切るとそのまま意気揚々と立ち去って行った。
男が何者であるのか、なぜ狙われたのかを探るために、男の後を追って、この船に忍び込んだ。
「まさか、晋助の船だとは思いもしなかった・・・」
真っ暗な天井裏から光が漏れている眼下の居室の真ん中に座る高杉を見下ろしながら、桂は呟いた。
高杉はなにやら夢中で書物を読んでいるようで、その内容までは見て取れない。

その時、船が大きく揺れ、桂はバランスを崩して、天井板に手をついた。
「かたっ」と小さな音がしたため、桂は高杉に気付かれたのではないかと焦って、眼下の様子を見た。しかし、高杉は何も気付いていないようで、相変わらず、書物から目を上げようとはしなかった。
「ほっ」と安心した途端、桂は空腹に気付いた。
「そういえば、もう何日も食ってないか・・・」
男を追って、船に潜入して以来、何も食べていなかったことを思い出した。
「まあ、まだ数日大丈夫だ」
桂は自分に言い聞かせながら、眼下の高杉の背中を見つめた。
そういえば、高杉も今日は何も食べていないようだ・・・昔から何かに夢中になったら、寝食を忘れて没頭するタイプだったな・・・と、桂は一緒に過ごしていたころの高杉のことを思い出していた。


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