スタドラ

□微風
1ページ/11ページ




南の島の朝の空気は透き通っていて、キラキラと太陽の光が眩しく降り注いでいる。
タクトは空を仰ぐと、太陽の光を全身に受けとめるように、両腕を伸ばした。
思いっきり空気を吸い込む。朝の輝きが体の中を巡っていくような爽やかな気持ちが広がった。


「タクト、何してるんだ?」
振り返るとスガタが笑顔で立っていた。
スガタの笑顔が眩しくて、思わず目を細める。

――スガタの笑顔のためなら、僕は何でもできる。

手を伸ばして、人差し指でスガタの頬に触れた。
ひんやりとした滑らかな肌が指先に吸い付くようで、気持ちいい。
珍しく振り払わずに触れさせているスガタの顔を覗き込んだ。
スガタは視線を逸らすと、タクトのネクタイに手をかけた。
「タクト、ネクタイ歪んでいるぞ」
「あ・・・」

ネクタイの結び目を整えようと、スガタが両手を伸ばした。
顔が近づいてきて、揺れた青い髪がタクトの人差し指を掠めた。

たったそれだけのことなのに、タクトの胸は「ドキリ」と切なく高鳴る。

スガタの顔に朝陽があたって、キラキラと輝いている。睫毛が光の中で揺れ、唇が淡く色づいて、小さな隙間から、少し歯が見えた。

タクトは唇に触れたい衝動にかられて、顔を近づけた。
スガタの顎を持つと上を向かせて、唇を寄せた。
やわらかい唇の隙間から舌を滑り込ませ、絡める。
「・・・あ・・・ふ・・・」
スガタの口から漏れる吐息が可愛らしくて、タクトは夢中でスガタの舌を吸った。
甘い舌が反応を返してくるように絡まる。
僅かに触れ合っているお互いの体が火照っている。
タクトは昨晩の情事を思い出して、体の中心が疼くのを感じた。

スガタの制服のシャツの胸のボタンを一つ外すと、隙間から手を差し込んだ。

「・・・タクト・・・やめ・・・」
胸の突起に触れた指先をスガタが制した。
構わず、反応し始めている胸の突起を指先で摘み、優しく転がした。
「・・・つ・・・」
スガタの口から艶かしい声が漏れたと思った瞬間、タクトは突き飛ばされていた。
「うわあ!」
仰向けに地面に倒れ、尻餅をついたタクトを一瞥したスガタはタクトの背後に微笑みながら、小さく呟いた。
「ワコが来た」
タクトが振り返ると、ワコが大きく手を振りながら、こちらに歩いてきていた。

タクトは立ち上がりながら、笑顔でワコに手を振り返した。


――いつもと変わらない三人の朝の風景が、今日も始まる。

タクトは、もう一度、空を見上げた。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ