スタドラ
□FAR
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外界から遮断されているかのように、静まり返ったシンドウ家の離れの和室。
和室の真ん中に白い寝具が乱れなく整然と敷かれ、白い着物を着たスガタが横たわっている。
最後の戦いを終え宇宙から帰ったあと、スガタは深い眠りに落ちたまま今も目覚めない。
「・・・スガタ・・」
スガタの足許に立ち、じっと見下ろすタクトは、ジャガーとタイガーとの会話を思い出していた。
スガタが眠っているという離れの和室へ入ろうとしたタクトの前に、二人が立ちはだかっていた。
「ひが日死さまの封印が破られましたので、今までのようにアプリボワゼによって、坊ちゃまを目覚めさせることができません」
表情を変えずに話すジャガーの言葉はタクトの心を砕いた。
「スガタ・・・スガタは、どうなるんだ?」
「後は、坊ちゃま自身の力で目覚めていただくことしかできません」
「それがいつになるのか、私たちにも・・・」
ジャガーの言葉に続けて、タイガーが涙を堪えて答えた。
「そ・・・そんな・・・スガタ!!」
二人を押しのけて和室に入ろうとしたタクトをジャガーが制止した。
「タクト様。申し訳ございませんが、ここより先は神聖な場所になりますので・・」
ジャガーの横で泣き崩れているタイガーを見ながらタクトは言った。
「もし・・・もし僕がアプリボワゼしたら、スガタは目覚めるんじゃないの」
「・・・それは・・・私たちも巫女様以外の方のアプリボワゼによって、王が目覚めるといったことは聞いたことがございません」
「でも何もしないで、ここでスガタが目覚めるのを待つよりも僕は自分が出来ることをしたい」
「タクト様・・・」
しばらく考え込んでいたジャガーは決意したように顔を上げ、タクトの目を見て答えた。
「分かりました。
それでしたら、タクト様に坊ちゃまをお任せしましょう」
ジャガーとタイガーが開いた神聖な和室の小さなにじり口をタクトは頭を下げてくぐった。タクトが入るとすぐに、外の穢れた空気を遮断するかのように、にじり口は閉じられた。
「ジャガーとタイガーのためにも・・・いや、僕自身のために・・スガタを目覚めさせる」
タクトは二人の表情を思い浮かべながら強く決意し、改めてスガタを見下ろした。