銀魂

□水無月の不機嫌
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「ま、待て!待て、高杉!!」

既に玄関まで歩いて行ってしまった高杉を慌てて追いかけた。

玄関の引き戸を開けている高杉の背中から手を伸ばして、腕を掴んだ。

「高杉!待てと行っているではないか……」

「なんだよ?」

振り返った高杉は俺から目を背けると、掴まれた腕を振りほどいた。

「せめて夕食でも食べていかないか?」

冷たい態度の高杉に、できるだけ穏やかに話しかけた。

だけど、俺の言葉に応える声は返ってこない。

じっと沈黙だけが続いていく。俺に背を向けて、玄関の引き戸のガラスを見ている高杉の表情が見えない。

「高杉……」

どうやって機嫌を直したらいいのかと、頭の中で巡らしてみても何も思いつかない。

とりあえず思いついたことを言ってみる。

「てんぷらと煮物と……」

言っている途中で、こんな言葉では機嫌を直すことができないのだと気付いて、口をつぐんだ。

――俺は先生ではないのだ……。

先生がどうやって高杉の機嫌を直していたのか、思い出そうとしても思い出せない。

自分と先生との大きな差が、そこにあるような気がする。

そんなことを考えて俯いていると、高杉の声が聞こえた。

「……誕生日に山菜かよ?」

顔を上げると、目の前に高杉の顔があった。

「……山菜は嫌いだったか?」

高杉が自分の方を向いてくれた、たったそれだけの喜びで自分の顔がほころんでしまうのが分かる。

「……山に採りに行ったな……銀時と先生も一緒だった」

高杉の目は、目の前にいてる俺ではなく、どこか遠くを見ているようだ。

「高杉……。すまない……」

なぜか謝ってしまった。

目の前にある高杉の目の奥が揺れている。

俺の方を向くと、高杉の口元が歪んだ。

「テメエが謝ることじゃね―だろう」

「高杉……俺は……」

「辛気臭い顔をしてね―で、てんぷらでも煮物でもさっさと作ってくれよな」

そう言って、式台に上がった高杉は振り返った。


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