銀魂

□桜の精
4ページ/7ページ



「それは、どういった人なんじゃ?」

「そうだな。考え方とかは老人なんだけど、体つきは、ちょっと色気を漂わせて、つい触れたくなるタイプなんだよな」

「なんだか、玄人ぽいな」

「いや、本人がそれに気付いてなくて、周りがドキドキしているタイプだな」

 ――玄人っぽいといえば、新八くんのお姉さんか? それとも俺の知らない本業の女性なのか? 銀時もこう見えて、なかなかどうした。遊んでいるのだな。

 桂は、銀時がプロのお店に通うところを想像して、「うん。うん」と頷いた。

「なかなか、手ごわそうだな。で、おぬしは、どうしたいのじゃ」

「そうだな。まずは、腕の中に抱きしめて、口付けをして、脱がしてみたいな」

「えっ??? ぬ、脱がす?」

 いきなり本筋に入ったようで、桂は動揺した。

「そりゃあ、やらし―ことをするには、服は邪魔じゃね?」

「そ、そうだな。そうとも言えるな」

「そして、体に触りたいな。全身くまなく」

「く、く、くまなく?」

 銀時の大胆な言葉に、桂は木から落ちそうになった。

「え……っと、そ、それは大胆だな」

「そうか? 触るぐらい普通じゃね?」

「そ、そうなのか?」

 ――普通なのか? そりゃあ本業のお姉さんなら、触るぐらい……。いや、お触りは厳禁なのではないのか?

 桂は銀時が上半身裸の女性と向き合っている姿を想像して、顔を真っ赤にした。

「それから、やっぱり胸にある桃色のもんをくるくるとか、させたいな」

「くるくる?」

「桃色の先端を指で挟んで転がして、時々、押したりもしたい……。こんなに詳しく言わなきゃならね―のかよ? 妖精のおじさんは、経験ね―のかよ?」

「いや、ごほんっ! だ、大丈夫だ。わしは精だからな。そんなものは、もうとっくの昔に飽きるほど経験しているぞ。そうだな。くるくるぐらいは、もう……、ぐるぐるするほど経験したぞ! あれは……くるくるは、不可欠だな! そうだ! 間違いない」

 突然、経験あるのかとか聞かれて、戸惑いながらも、どうにかして勢いで答えた桂の声は、少し上ずっていた。

「だろ? それで、その後、足の付け根を舐めて―な」

「えっ? な、舐める? 何を?」

 銀時の話がどんどんエスカレートしてきて、桂は徐々に動揺を隠せなくなってきた。

「わかんね―のかよ! 足の付け根にある、アレだよ。おじさん知らね―ってことね―よな? 妖精にはね―のかよ?」

「いや、もちろん知ってるぞ。アレだな。アレはな。やっぱり飴のようにな。ぺろぺろすべきものだな」

「だろ? それから、後ろにある桃の間に指を入れたいんだ」

「も、もも??? ももがあるのか?」

「あれ? 妖精にはねエの? ぷるんぷるんした桃の間に穴が開いていて、そこに指を入れたら、すっごくエロくなって、天にも昇るほどの気持ち良さらしいぜ」

「そ、そうだな……。あれは、そうだな、天に昇るな。間違いないな。きっとそうだな…。うんうん。知っているぞ。わしもそれで天に昇って、今、こうして妖精をしているのだ。うん。天は近いぞ」

 銀時が言う桃の意味がいまいちわからないが、取りあえず、妖精が知らないとは言えない。

「ああ〜。そんなことがしたいな」

「なかなか、願い事が多いな」

「叶えてくれるって、言ったよな?」

 銀時の話を夢中で聞いているうちに、自分が願い事を叶えると言ったことを忘れかけていた。

「おおおおっ! そうだ! そうだな! 叶えてやろう」

「マジで?」

 銀時の声に期待がこもっている。願い事を聞き出したまではよかったが、果たして、どうやって叶えるべきか……。

「う〜む」

 恋に悩んでいる(たぶん)銀時の想いを叶えてやりたい気持ちはある。だけど、相手の気持ちも聞いておかなくてはならない。愛のキューピットは、どうやって目的を達成しているのだろうか? どうしたものか……。

「う〜む」

「なぁ、妖精のおじさんよぉ。もしかして願い事を叶えることができね―んじゃね―の?」

 どうすべきかと悩んでいる桂の返事が遅くて、訝しんでいるようだ。
取りあえず、何かしらの返事をしなくては……。

願い事を叶えるためには、やはり賽銭的なものがいるといえば、銀時も諦めるかもしれない。

「そうだな……お前さんの好物はなんだ?」

「チョコパフェだけど、今は団子が食べて―な。桜の花を見てると、団子が食いたくなる」

「だったら、この桜が散るまで、毎日、お前さんの好物の団子をここに供え続けたら、願い事を叶えてやろう」

「なんだよ、それ?」

 大好物のものを誰かわからない他人に分け与え続けることなど、銀時にはできないだろう。だからこれを条件にしようと思いついた桂に対して、銀時は不満げな声を張り上げた。

「なんだよ。条件付きって、ありえね―。どんな妖精だよ!」

 怒られてもしかたない。なにしろ俺は妖精ではないのだから。と、桂は開き直っていた。

 銀時が完全に諦めてくれるようにと、さらに強く言い放った。

「わかったか、一日も欠かさずだぞ」

これで銀時も諦めるだろう。そう思いながらも、秘密を聞いてしまったことに対して、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、桜の木を離れていく銀時の背中を見送った。

――ところで、銀時の好きな女性は、誰なんだろう?

 最後まで、相手の女性が思い当らなかった桂は、銀時の周りにいてる女性たちの顔を一人ひとり思い浮かべながら、桜の木を降りた。















次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ