銀魂

□桜の精
3ページ/7ページ



――そうか……。銀時にも好きな女性がいてるとはな……。
 いったい、どこの誰なんだろうか?

 桂の頭の中に、色んな女性が浮かび上がってくる。

 ――銀時の周りにいてる女性は、皆、一癖も二癖もあるが、それぞれに魅力的とも言える。銀時が惚れないわけはないか……。それならば、ここで、俺が一肌脱いでやらねばならない。

「おおそうか。なら願い事を叶えてやろう。その好きな人と、どんなことがしたいのだ?」

「妖精さんよ。えらく立ち入ったことを聞いてくるな」

「えっ? 立ち入ったことなのか?」

 まずは具体的なことを聞かなくては、何もできないと思っていた桂は、銀時の嫌そうな声に動揺した。

 ――聞いてはいけないことだったのか?

「俺は、やらし―ことって、言っただろ? やらし―ことといえば、大体分かるだろうが」

 そう言われて、分からないと答えることはできない。なにしろ桜の精なのだから、何でもお見通しのはずだ。

「えっ? ごほん。そうだな。やらし―ことだな……」

 桂は、動揺しながらも取り繕いながら答えた。

「もしかして、知りたい? 俺が考えているやらし―こと」

「いや、わしは別にそんな……興味を持っているとかじゃないからな」

「持ってるんだろう?」

「ごほん。神であるわしが、そんなことに興味を持っている訳があるまい」

「あれ? 妖精じゃなかったのか?」

「おお、そうだ。妖精だ」

「なんだか、怪しいな」

「怪しくないぞ」

 銀時の訝しげな声を否定するように、桂は間髪を入れずに答えた。

「なら、俺の願いを叶えてくれるんだな」

「おお、叶えてやるぞ。もちろんじゃないか!」

 ここで信用を落とすわけにはいかない。と、桂は語尾に力を入れた。

「ところで、どんな願いなんだ」

「好きなやつがいてるんだが、これが堅物で、何にもできないんだよな」

「ふむふむ。そうか、ずいぶんと箱入りな訳だな」

「箱入り、ってか、もう老人のように、気持ちの上では枯れてるな」

「老人……。おぬし。年上が好みか?」

 銀時の部屋の1階でスナックを経営している熟女の姿が、桂の脳裏に浮かんだ。

「いや、そういう意味じゃなくて、まるで老人のような精神の持ち主ってことだ」

 銀時の話を聞いていると、想像とは異なっているようで、桂は脳裏に浮かんでいる女性の姿を掻き消した。

「う〜む。なかなか手ごわそうだな。そんな堅物とやらしいこと(ごほん)ができるとは思えんが」

「精神は老人に近いけど、体はやたらと色っぽいんだよな」

 銀時の話を聞けば聞くほど、桂には、銀時の好きな女性が誰か分からなかった。

――そんな女性が銀時の身近にいてたとは、今まで気付きもしなかった。とにかく、もっと詳しく聞かなくては、どうしようもない。

そう思った桂は、さらに詳しく聞き出そうとした。















次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ