銀魂
□桜の精
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――そうか……。銀時にも好きな女性がいてるとはな……。
いったい、どこの誰なんだろうか?
桂の頭の中に、色んな女性が浮かび上がってくる。
――銀時の周りにいてる女性は、皆、一癖も二癖もあるが、それぞれに魅力的とも言える。銀時が惚れないわけはないか……。それならば、ここで、俺が一肌脱いでやらねばならない。
「おおそうか。なら願い事を叶えてやろう。その好きな人と、どんなことがしたいのだ?」
「妖精さんよ。えらく立ち入ったことを聞いてくるな」
「えっ? 立ち入ったことなのか?」
まずは具体的なことを聞かなくては、何もできないと思っていた桂は、銀時の嫌そうな声に動揺した。
――聞いてはいけないことだったのか?
「俺は、やらし―ことって、言っただろ? やらし―ことといえば、大体分かるだろうが」
そう言われて、分からないと答えることはできない。なにしろ桜の精なのだから、何でもお見通しのはずだ。
「えっ? ごほん。そうだな。やらし―ことだな……」
桂は、動揺しながらも取り繕いながら答えた。
「もしかして、知りたい? 俺が考えているやらし―こと」
「いや、わしは別にそんな……興味を持っているとかじゃないからな」
「持ってるんだろう?」
「ごほん。神であるわしが、そんなことに興味を持っている訳があるまい」
「あれ? 妖精じゃなかったのか?」
「おお、そうだ。妖精だ」
「なんだか、怪しいな」
「怪しくないぞ」
銀時の訝しげな声を否定するように、桂は間髪を入れずに答えた。
「なら、俺の願いを叶えてくれるんだな」
「おお、叶えてやるぞ。もちろんじゃないか!」
ここで信用を落とすわけにはいかない。と、桂は語尾に力を入れた。
「ところで、どんな願いなんだ」
「好きなやつがいてるんだが、これが堅物で、何にもできないんだよな」
「ふむふむ。そうか、ずいぶんと箱入りな訳だな」
「箱入り、ってか、もう老人のように、気持ちの上では枯れてるな」
「老人……。おぬし。年上が好みか?」
銀時の部屋の1階でスナックを経営している熟女の姿が、桂の脳裏に浮かんだ。
「いや、そういう意味じゃなくて、まるで老人のような精神の持ち主ってことだ」
銀時の話を聞いていると、想像とは異なっているようで、桂は脳裏に浮かんでいる女性の姿を掻き消した。
「う〜む。なかなか手ごわそうだな。そんな堅物とやらしいこと(ごほん)ができるとは思えんが」
「精神は老人に近いけど、体はやたらと色っぽいんだよな」
銀時の話を聞けば聞くほど、桂には、銀時の好きな女性が誰か分からなかった。
――そんな女性が銀時の身近にいてたとは、今まで気付きもしなかった。とにかく、もっと詳しく聞かなくては、どうしようもない。
そう思った桂は、さらに詳しく聞き出そうとした。