凍える物語
□せめて見て…
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冬は別に嫌いじゃない…
雪が降れば幻想的で綺麗だと、正直思うし…
俺…は、不二先輩が…好き…
友達的なんて思われたくない、俺は恋愛感情を不二先輩に持っている…
でも…
最近先輩の様子がおかしい…
よくわからない。
俺が好きなことに気付いてもらいたい…
「不二先輩、ん…」
俺は先輩の胸に身体を埋めて、匂いをかぐ…
「……?」
「今日もいい匂いするっすね…」
「…やめてくれないか?」
「…不二…先輩…?」
最近冷たい…
好きな人にこう突き放されるような言葉を言われると、傷付く事を不二先輩に教わった…
夜…
窓から覗く月を睨む…
こんな夜空に俺がどんなに願ったとしても、何も叶えちゃくれないんだ…
俺はこれから何をすれば不二先輩が見てくれるかな?
ねぇ…?
手塚部長を見てる不二先輩も、菊丸先輩と一緒に教室に行く姿も見たくない…
俺を求めて…
ねぇ…
先輩…
不二先輩…?
朝になった。
当たり前だが眩しい、アホかもしれないがこの眩しさが不二先輩の笑顔を思わせられて胸がキュウウと締め付けられて、痛くてしかたない…。
バックの中にカッターを入れて朝早くから俺は部活に行った…
氷付くような朝の冷たい空気が息を吸う度に喉を刺す…
「はあはあ…」
「…珍しい事もあるんだ?越前が寝坊もしないでしかもこんな朝早くから来るなんて…」
最近、越前が愛おしくてしかたがない、でも…俺は越前を愛せない、どうしてなら俺達には性別、同性という壁が邪魔をするから…
もし…
僕が、越前と付き合っている事がばれてみんなに笑い話にされたりでもしたら…
僕はせめて彼に幸せになって欲しい…
だからこさ、僕を選んではいけない…
僕は君の気持ちにも、自分自身の気持ちにも嘘をついてでも君の幸せを最優先するよ…
君が傷付く姿を見るのは死んでもごめんだから…
ぶしゃあああ…
なんだ…?
俺にかかるこの温かい鉄臭い…
血…!!
目を反らしつづけた先輩に、俺を見てもらいたくて出来る最短の方法を手に入れました…。
俺は持ってきたカッターを首に当てて一気にスライドさせた…
死んでしまった俺の心には、痛みさえ感じる余裕は無くて…
ただ、今こうして不二先輩が俺を見ていてくれてる事が単純に嬉しくて…
此処までが俺の記憶…