神の一手を打てたなら……

□第一局
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一方、とある家で。
広い家に、一人の少女がいた。

この家には、両親がいなかった。仕送りしてくれる保護者、という名義の人物だけがいる。

「ヒカル……」

少女もまた、泣いていた。
彼女こそ、この家の主であり、先程まで対局していた相手Saiの正体。

藤原彩花である。

「本当に強く、なりましたね。まだ甘い所はありますが……」

少女が、空を仰ぐ。澄んだ青空が見えた。

「……神は、私にたくさんの時間を与えてくださった――――」

この体。若さ。時間。
全て、生きていると感じられるもの。

ヒカルと同じ時間を、佐為は生きる事が出来る。
そう、少女は佐為の生まれ変わりとも呼べる人物だった。

藤原佐為の記憶を持ったまま、目が覚めたら中学生の女子の体を持っていた。

今の佐為は、気付いてもらえる。触れられる。話したら返事が返ってくる。


何より、碁が打てる。


彩花は愛おしげにパソコンを見た。

「ヒカル」

そこにヒカルがいるかのように、パソコンに呼びかけた。

「ヒカル、また会いましょう。きっと。私は貴方を追いかけますから。

いいえ、貴方が待っていてくれるなら……すぐに追いついてみせます」

彩花は行く先を思い浮かべた。
院生に、それから若獅子戦、そしてプロに。
プロまで行けば、ヒカルと対等に打てる。他の強い者達とも打てる。

その為に、とまず思い浮かべたのが。

「さて、暇が出来たら行く事にしましょうか」

手にあったのは、碁会所のチラシ。
どこに行くかは決めている。

というか、彼女はそこ以外はもう一件……ヒカルが出入りしていそうなところしか知らない。

「楽しみ、ですね」

ふふ、と笑って彼女は傍にあった碁盤に先程の棋譜を並べ始めた。






次回予告!

「Saiと打たせろ!!」

「君は、Saiか……?」

「佐為!!佐為なんだろ!?佐為ーーーーーーッ!!!」

「また、会いましょうね――――」
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