『Two Way World』

□『終わり』編
1ページ/1ページ

後のある遺跡の発見により、異世界『ラートン』には過去に知的生命体が存在していた事が判明する。
彼らは『クシャナグ人』と言い、光学迷彩技術や生物繁殖技術など高度な科学文明を有していたにも関わらず、滅んでしまった事が遺跡の発掘、研究で明らかになった。

異世界『ラートン』で見た奇妙な生物や不思議な建造物などは光学迷彩技術や生物繁殖技術によって使われていた原料や材料、実験的に作られた生物や物質などだったのだ。

彼らの研究資料によると、幾つもの奇妙な生物を作り出した生物繁殖技術は、光学迷彩技術に必要不可欠な成分を抽出する為だったようで、光学迷彩技術は最終的に人体へ投与し、狩りや犯罪の防止、医療などに役立てる計画があったようだ。

しかし、研究者の一部にその高度な光学迷彩技術を悪用する者が現れた。
透明化する事で犯罪が安易に行えたからだ。

その時点では、まだ人体実験が完全に終了していない開発途中段階の技術ではあったのだが、一錠服用すれば約一時間の人体透明化が得られたので、犯罪を犯すには事足りたのだ。

それに対抗、防衛しようとした研究者達は開発を急ぎ完成させ、彼らもまた光学迷彩技術を使い、身内からの犯罪をなんとか防いでいた。

それから暫くして、薬が完成した事で一般的に広まり『クシャナグ人』の全てが一度はその便利な光学迷彩技術を使った事のある時代になって行く。

だが、開発を急ぎ過ぎた事により、予想外な出来事が『クシャナグ人』達を襲った。
植物実験、動物実験では現れなかった副作用が数十年後、『クシャナグ人』達の体を蝕んで行ったのだ。

彼らの光学迷彩技術は薬を服用した時、一時的に透明に見えるだけで物理的にはそこに存在する。
つまり、姿が見えないだけで、そこには確実に存在し、触れたり話したりする事は出来るのだ。

しかし、副作用によりそこに支障が起きた。
副作用の症状は非常に多岐にわたり様々なのだが、一番問題視されたのが実質的透明化現象だ。
これは物理的には存在し得る筈の肉体が、全身、もしくは体の一部が消滅してしまう肉体消滅現象だ。

これらの現象に対応すべく、研究者達は必死に研究を重ねた。
だが、時既に遅く、『クシャナグ人』達は次々と消滅していった。

その研究所の遺跡の資料によると、解りうる情報はここまでだが、恐らく、この異世界『ラートン』で我々が耳にした声は、何らかの理由で生き残り、未だに只ひたすらさ迷い歩く『クシャナグ人』達なのかも知れない…。

第一異世界『ラートン』
T-17地区:ガルフ研究所跡
調査報告書
バスティン・グローバー

(完)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ