中央

□呼吸を忘れた魚
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この沈黙をどうにかしなければ。
自分を見つめるエースの瞳が、ルフィを得体の知れない焦りに駆り立てた。

しかし、

エースは口元に笑みを作り、ルフィに自分の隣へこい、と手招きしてみせた。

行っちゃいけない。

傍に行けば、何かが起こる。

そう警告が聞こえていて、そのせいで呼吸が乱れているのに。

ルフィは兄の元に近づいてしまった。

目の前に来たルフィに、エースは笑いながら手を伸ばした。

フワッと柔らかく、抱き締めて。

「…溺れそうな闇はな、お前だルフィ…。」

耳元で囁いて。

「お前に溺れて、息も出来ねぇんだ。けどな?そこから浮かぶことが出来るんだ。」

抱き締めていた手を。

「お前も俺もいなくなれば、もう辛くねぇんだ。」

「!!」

気付いた時にはもう遅く、エースの手はルフィの首に掛かり、物凄い力で締め付けた。

「エー…ス。」

戦慄くルフィの唇に、エースは口付けて。

そのまま、エースはルフィを離すことなく体をメリーの手摺りから海へと落下させた。

激しい水しぶきをあげ、二人は夜の海へと沈む。

悪魔の実の能力者は、泳ぐことが出来ない。

海で溺れたら最後。

ルフィは意識が無くなるまで、エースの唇を感じていた。

海水のせいで力が抜けていくはずなのに、それでも離さないエースに。

哀し過ぎる愛を感じていた。








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