□〜6月2日
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「あ〜る〜晴れた〜ひ〜る〜下がり〜い〜ち〜ば〜へつづ〜くみぃち〜〜〜♪」
「………先輩、頭でも打ったか?」
「おおえーすくん、せんぱいをしんぱいしてくれるなんてきみはなぁんていいこなんだぁ、
せんぱいをしんぱい…くくっ」
「いや全然面白くねぇし、マジで大丈夫かよ?」
「だいじょぶ〜といえば、だいじょぶ〜、だし〜。
わぁるい、といえば、わぁるい、かなぁ?
五月病だよエース君」
「急に口調がしっかりしたな」
「さすがにあの体勢は頭に血が上る」

そう言って屋上の給水機の上でゴロリと寝転がり上体をそらせていた先輩はトッ、と軽い音を立てて俺の横に飛び降りてきた。

「うっあー、よく寝た」
「寝てたのかよ」
「間接ガキガキー」
「まああんな体勢で寝りゃあな」

てかよく寝れたなぁ、と変な感心をしていた俺の心を読んだように、ここんとこお疲れなのよん先輩は、
と先輩は俺の頭をわっしわっしと撫でる。

「よし、ふぁーすとふーどを食べにいこうではないかえーす君」
「は?午後の授業はどうすんだよ」
「今先輩はお金をたくさん持ってるが、来るかい?」
「あざーっす!!」
「午後の授業はどうした一年」
「誘っといてなに言ってんだよ二年」

機嫌を損ねたらおごりはなしかもしれないってのについぽろっと出た俺の言葉に、帰ってきたのはおごりの撤廃でも鉄拳でもなく、アンニュイな溜め息。

「最近勉強する気がおきなくてねぇ、五月病だよ」
「…それって俺らの病気じゃねぇの?二年生が何言ってんだよ」
「ちなみに英語に訳すとスチューデント・アパシーと言う」
「それをさらに日本語に訳すと?」
「学生無気力症」
「病気違くね?」

ナマイキ言うならおごってやらんぞ、と一人さっさと屋上の扉を開ける先輩を、俺は平謝りしながら追いかけた。



Student apathy
  (五月病)



(ごーめんて先輩)
(誠意が感じられない、この怒りを鎮めるにはエース君におごってもらうでもしないとなぁ)
(あれ?)
(ふっふっふ)


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