短編ぶっく2

□恋する権利
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「暇だしさ、新選組奇襲に行こうぜっ☆」
「日本語をしゃべって下さい。」





皆さんお忘れかと思いますが、私も今をトキメク若者。
ちょっと初心に返って「帰りにマック寄ってこうぜ!」みたいなJKのノリで提案してみれば、天霧にばっさり突っ込まれてしまった。
…JKって、もしかして死語?
あ、いやでも、この時代ならむしろ流行最先端語?
…女子高生なる生き物がいない時代に、流行も最先端もないよね。
ちゃんとわかってるし!



「何をぶつぶつと仰っているのですか。」



眉間に皺を寄せて、私を凝視する天霧。
そんなゴミを見るような目で私を見ないでよ!
っていうか日に日に私への態度悪くなってるよね。
これでも西の頭領なんですがね!





「ねぇ〜天霧ぃ〜暇だよぉ〜!新選組に奇襲かけようよぉ〜!!」
「西の頭領である自覚がおありなら、易々と屋敷を空けないで頂きたいものです。」



今日も天霧は堅っ苦しい。
いいじゃないか、屋敷の一つや二つ空けたって。





「よぉ姫さん!暇だっていうなら、俺が付き合ってやるから奇襲仕掛けようぜ!」
「「!」」



背後から聞こえた声に、天霧と揃って振り返る。
声の主は、不知火くんだった。



「うん、行く!」
「風間!!!」
「嫌なら天霧は来なくていいよ。この間の『千鶴は俺の嫁宣言』から、新選組の天霧に対する態度、怖いもんね。」
「誰のせいだと思ってるんですか。」
「私かな。」
「…。」



あ、天霧の目がよどんでる(笑)
本当に彼は気苦労の絶えないお人です。





「ならば、お言葉に甘えて、私は留守を守ります。」
「うん、わかった。」



天霧の返事を聞いて頷くと、私は黒の羽織をひっ掴む。
それを肩にかけて、窓枠に足をかけた。



「行こうか、不知火くん。いってきまーす、天霧!」
「風間!!!ちゃんと玄関から出なさいっ!!!」



後ろから天霧の説教が聞こえるけど、窓枠を蹴り、外に飛び出した私は返事もしなかった。








「姫さんも、あいつ苛めるのそろそろやめてやったらどうだ?」
「考えてとくよ。」



並んで屋根の上を駆けながら、不知火くんと言葉を交わす。
目指すは新選組屯所―――――。















門番をしていた隊士にすぐに見つかった私と不知火くんは、新選組幹部の連中に囲まれていた。
この顔ぶれも、見慣れた光景だ。





「懲りねぇなぁ、お前らも。」



原田は口元に淡い笑みを浮かべて、槍の穂先を不知火くんに向ける。
不知火くんは楽しそうな凶悪な笑みを浮かべて銃を構えていた。
おー相変わらず怖い顔!





「今日は一人足りねぇじゃねぇか。愛想つかされたか?」
「貴様ら程度の相手など、一人欠けたくらいが丁度よいだろう。」



挑発的な永倉の言葉に、私も挑発的な言葉でお返しする。
目には目を。
挑発には挑発を。





「残念だったな?千鶴をかっさらおうとする張本人に八つ当たりが出来ずに。」



私が一言つけ足せば、瞬間殺気が増す。
肌を刺すような張り詰めた空気が心地よい。





「何故雪村を狙うのだ。」
「女鬼は貴重だからだ。我らは、我らの血を絶やす訳にはゆかぬのだ。」



斎藤の問いかけに答えれば、原田さんや永倉、平助は意味がわからないと言った表情を浮かべていた。
わからなくていい。
別にわかって欲しい訳じゃないから。








「だったらてめぇがその『天霧』って奴の所に嫁げば問題ねぇだろうが。風間。」
「―――――、」
「これ以上アイツに、手を出すんじゃねぇ!!」



唸るように言葉を吐き出したのは、土方さん…。

嗚呼、他の誰に言われたとしても、貴方にだけは言われたくなかったよ。
私だって…私にだって…。





「(普通に恋する権利、あってもいいじゃない…。)」



沈む気持ちを振り払って、顔を上げる。





「…?」



私たちを囲む幹部たち(土方さんを除く)の驚いた顔が目に飛び込んできた。

え、何?
私、なんか変なことした?
ただ俯かせていた顔を上げただけのはずですが…!?





「おん、な…?お前が…?」



困惑する私の耳に届いたのは、覇気のない平助の独り言。

…。
ああ、そういえば私が女だって知ってるのは土方さんと千鶴ちゃんだけだった。
だからみんな驚いてるのか!
なんだよ〜私がびっくりしたじゃないか!





「どーいうことだよ土方さんっ!!!アイツが!?女!?!?」
「聞いてねーよっ!!!」



沈黙が弾けたように、土方さんに食って掛かる永倉と平助。
斎藤は戸惑いを吹っ切れないでいるらしい。
原田さんはなんだかんだですんなり受け入れているようだった。








「悪ぃな、クズ共。」
「!」



今まで黙っていた不知火くんが口を開いたかと思えば、突然肩を引かれた。
強引なそれに、態勢を崩した私は、ぽすんと不知火くんの腕の中に収まってしまった。





「姫さんは俺が狙ってんだよ。残念だったな、土方。」



不知火くんのどこか的外れな言葉に、私は眉間に皺が寄る。
傷口に塩、とはこのことだ。





「もうよい。退くぞ、不知火。」



そう言って、不知火くんの腕から抜け出して、土方さんたちに背を向けて歩き出した。



「んだよ、これからだってのに。」



文句を言いながらもついてくる不知火くんを従えて、屯所を後にする。
私は最後まで、土方さんの方を振り返れなかった―――――。

わかってた。
私には、普通に恋する権利もないことくらい。
でも、土方さんを見るたび、心が抉られるように痛い。








「全ては一族の為に…。」



そう呟いて唇を噛みしめる私を、不知火くんが見ていたことを、私は知らなかった。




恋する権利



(あって当たり前なものだと)
(ずっとずっと、思ってたのに)





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なんだか最近シリアス傾向にある風間成代です(笑)
しかしイマイチシリアスになりきれないのは(ry

今回千鶴、沖田、天霧は欠席です!
人数多いと空気になる人が増えるからね…。

管理人の趣味により不知火フラグがたってしまった…orz
匡くん愛してるんだよ←


リクエスト:『千鶴と土方氏以外の、まだ成り代わり主を女だと知らない幹部に女バレ的な話をぜひ!』


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