おお振りDream

□貴方が幸せならそれでいいなんて絶対に言えない
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幼なじみなら、それがわかるようにお揃いのものを持ちたい。
それは小さい子供の独占欲の現れに似ているものがある。
だから元希とペアリングを買った、わたしの誕生日だったのもあってちょっと奮発した。
イニシャルの入ったそれは、わたしの一番のお気に入り。
校則違反だってわかってるけど、チェーンに通して、いつも首にかけてる。
元希にも同じように持ってもらった。
首から下げないでも、小袋に入れていつも持ってて欲しいと言えば、元希はブーブー文句を言う。

「でも、ちゃんと持ってるよ」

密かにチェックをしてくれた秋丸が、こっそりと教えてくれた。
持っててくれてるんだなって、それが素直に嬉しかった。
何年も前のことなのに鮮明に覚えているのは、それだけ印象強く、嬉しかったんだろう。
今思えば、なんて束縛。
決して高価じゃない指輪でも気持ちは詰まってるわけで、それは軽く念でもある。
例え元希に彼女ができたって、わたしは元希の『親友』の位置にいたい。

隣家、同校、それは必須条件。

受験する学校を聞いたのも、同じ所に行く気だったから。
わたしの学力ならなんとか、元希ならスポーツ推薦で入学できる高校は、やっぱり野球部が強かった。

だから一年、勉強を必死に頑張った。
判定がCからAになるくらいに頑張った。
その間、元希は足を怪我して野球部をやめて、シニアに行っちゃったけど。
でも戻る所は同じなはずだから、志望高校は代えなかった。

「武蔵野行く」

元希がそう言ったのは、受験が明日に迫った一月末日。
志望高校変更どころか、取り消しだってきかない。
なんでだと聞けば、一番の好条件だからだなんて言う。

「武蔵野なんて……野球部弱いじゃん」
「知ってる」

だから俺が変える、そんな格好いいことを言われれば、納得したくもなるけど。

じゃあわたしの立場は?
元希と同じ高校行くはずだったわたしの気持ちは?

「わたしはどうすればいいのよ!」

元希と一緒にいたかった。
同じ高校に行きたかった。

元希の道だけが輝いてるように見えた。

なにも言ってくれない秋丸に、八つ当たりだとわかっていながら怒鳴り散らした。





貴方が幸せならそれでいいなんて

           絶対に言えない

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