復活Novel

□いつもの君はドコ行った
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「赤」が大量についた雲雀恭弥の顔を見て、綱吉は驚愕した。
今まで見たこともないような鮮血が足下にまで滴り落ち、そこに僅かながらにも水溜まりを作っている。
多少見慣れたといえど普通の、しかもこんな学校でそんな赤い世界など夢にも見なかった綱吉は慌てて恭弥に駆け寄った。
どうしたんですか、大丈夫ですかなんて在来たりな言葉しか出てこないのは持っている語彙が少ないからだ。
テストの点数万年ビリを舐めるな。
例え雲雀といえどこれだけの出血をしていれば大人しく、いやもしかしたら多少抵抗があるかもしれないが他者が近付けるかもしれないと踏んだのにも関わらず、彼はいつもと同じように言ってのけた。

「近付いてこないで」

そう言っている本人から近付いて来るのに対し、綱吉は一歩足を戻した。
口調はそのままだが一気にその水の量がまし、「滴り落ちていた」ものが「流れ落ち」だした。

「大丈夫なのー!?」

思わず敬語を忘れる綱吉に、しかし雲雀は別段気にした風でもなくニヒルに笑う。
とにかく止血を、と騒ぐ綱吉の腕を掴み、雲雀はその顔を近付けた。
綱吉の鼻を鉄臭さが掠める。
どってことないよ、そう言うと鼻を摘んだ。
どういうわけだかそれで血の流れが止み、顔についていた赤を拭き取れば傷は全くなかった。
目を点にしてえ、え?と首を傾げる綱吉はまるで犬か猫の様。
そんな彼に雲雀は呟く。
鼻血だよ、と。

「鼻血・・・ですか」

なんでまた鼻血なんか。
その問いは綱吉の喉からでかかり、すぐに引っ込んだ。
ハァハァと荒い息が生温く、顔にかかって気持ち悪い。
いつの間にか鼻先が触れそうなくらい近付いていた雲雀を見て、ぞくぞくと背筋が伸びた感覚が襲って来た。

「・・・ひ、ばりさ?」

「僕の想像力は素晴らしいと思わない?」

なにがですか、噛み合わない話に突っ込みを忘れずに、綱吉はさらにジワジワと寄る雲雀を警戒する。
なんだか危ない、俺じゃないこの人がだ。
心で自分に訴えかけ、なるべく冷静を保つ。
そうでもしないとパニックになる、それくらい雲雀はスプラッタ、さらに気持ち悪い。
まだ鼻を押さえる指の間から、やっぱり赤が流れ出した。
昨日夢を見たんだ。
そう言う雲雀の目は希望に満ちていた、今までに見たことがない。

「綱吉が出てきたよ、それだけでも凄いんだけどね」

なにがだよ、という台詞が出て来るとほぼ同時、雲雀は綱吉にとってありえないことをサラリと吐いた。

「まさかセーラー服で迫ってくるなんて思わなかったよ」

風紀を乱す気?という雲雀の顔は、怒るというよりどこかネジの抜けた危ない顔だ。
つまり雲雀は綱吉の格好をセーラー服に置き換えてみているようだった。
鼻血が出るほど興奮して、綱吉本人を見たら我慢できなくなったというところか。

ああ、変態だ変態だとは思ってたけど・・・!

呆れを通り越して哀れに思い始めたが、それよりも言いたいことがあった。
それこそ敬語とか何も関係なく。

「次は『お兄ちゃん』って呼んでね」

「死ねば?」



いつもの君はドコ行った?

クールビューティ、カムバック!



end
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