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□愛おしくて、切なくて
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この手を取って



『愛おしくて、切なくて』


穏やかな午後の日差しに包まれる部屋。
教団の一室。

ソファーに座り本を読むユウと、その隣でユウの顔を見つめるラビ。
柔らかい空気の中、静寂を破ったのはユウだった。
「…おい赤毛ウサギ」
本から目を逸らさずに、不満げな声をあげるユウ。
「何さ?」
その声に動揺する事もなく、ラビは小さく微笑んで答えた。
そんなラビの声に、ユウは小さく溜息をつく。
「ずっとそうしてて楽しいか?」
「ユウの綺麗な顔見てるだけで、すっげぇ幸せさ」


かれこれ三十分。
ユウが読書をしている間中ずっとその様子を見つめていたラビ。
いい加減その視線に耐え切れなくなったユウは、静かに本を閉じた。
「お前って本当馬鹿だな」
「ユウが好きなんだから仕方ねぇさ」
「意味分かんねぇ///」
「赤くなってんぞ?」
「黙れ」
「ちょッタンマ! ごめッ、俺が悪かったさ!!」
六幻へと伸ばされたユウの手をラビが必死に止める。
軽く舌打ちをし、ユウはソファーから立ち上がった。

「疲れた。寝る」
そう言い捨て歩き出そうとするユウの腕を、いきなりラビの右手が強く引いた。
「なッ…!」
突然の出来事に声を上げる事もできず、バランスを失ったユウの身体はそのままソファーへと倒れこんだ。
抵抗しようとする細い腕を抑え込み、ユウの身体に覆い被さる形になったラビが妖しげに微笑んだ。
「散々おあずけしといて、ご褒美も無しさ?」
「何言って、ッ!」

ラビはユウの唇へ口付けた。
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