花文庫U

□初詣でぃと
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三が日を過ぎても、鳥居の前で待ち合わせたのを後悔するくらいに神社は人で賑わっている。
戦極神社は昨年、不運な大火に見舞われ消失したが、東西主君・領主総出で再建し、目出度く新しい年を迎える事が出来た。
その再建現場で幸村は清正に工事の基礎を教えてもらったり、戦で見舞えたときの思い出話などで盛り上がり…気づくと、特別な関係になっていた。
再建できたら、一緒にお参りに行こうと誘われ…今日、やっと約束を果たせる…のだが。
参道には屋台がひしめき合い、人で溢れ、約束の時間を過ぎようとしているのに、前に進めないほどだ。

「ちょっと、通してくれ、ってば!」

人を掻き分けむりやりに進もうとすると、ぺたり、と頬に誰かが持っていた、あんず飴の水あめが少しひっついてしまった。出来たてだったらしい。

「…っ、ついてない」

むりやりに進もうとした自分も悪いのだ、そもそも時間に余裕を持たなかったのがいけない…と、しゅんと俯いたその時、名前を呼ばれて力強い腕に引かれる。
顔を上げると、清正がいる。

「清正どの!」
「こっちだ、幸村」

屋台と屋台の間を通り抜け、その奥にある路地のような場所に抜ける。
そこには屋台の荷物が積み上げられているだけで、人は殆どいない。

「時間、ごめんなさい」
「いいさ、思った以上に賑わって…皆が喜んでいる証拠だな。俺達も頑張ったかいがあったな」

頭を撫でて、人ごみで乱れた髪を指で丁寧に梳いて整えてくれた。
と、清正の顔が、するっと近づき…先ほどの水あめを舌先で舐め取った。

「なっ…!」
「ハハッ…お前さんみたいな、可愛い味だな」
「ど、どういう意味なんだ!?」
「甘酸っぱい恋の味ってとこかな…、さ、行こうか」

当たり前のように、手を引かれて参道に戻った。
清正さんは、こっちが照れてしまうような台詞をスルリと言葉にする。それが、何故か心地良いのだから仕方ない。
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