猫のお話

□みんな大好き!ぬこぬ皇帝
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みんな大好き!ぬこぬ皇帝



ぬこの美容師さん2

「き、君が僕の担当?勘弁してぇぇぇ!」
スザクが悲鳴を上げると、咲世子を担当していたぬこぬ皇帝陛下が、おや?と首を傾げた。
「お客様〜?ロロじゃお気に召しませんかにゃ?でしたらマオに変更しますかにゃ?ただしマオはまだみにゃらいにゃので、バリカンで丸刈りしかできにゃいですにゃ」
「あ、いえ…シャンプーだけお願いしたいのでロロで結構です」
ぬこぬ皇帝陛下は、コクリと頷いた。
「ロロ、お客様には丁寧ににゃ?」
「は〜い!ではシャンプーいたしま〜す!」
そう言ってロロが手に取ったのは、毛糸洗い用の洗剤である。
「ち、ちょっと待ってロロ!それ、シャンプーじゃな…」
「大丈夫ですにゃ〜。これは毛100パーセントでも洗えるって書いてありますにゃ〜。手洗いすれば縮んだりしませんにゃ〜」
「いやだから、それは羊毛の話でしょ?僕の頭は羊毛じゃないんですけど!」
「平気平気。ここの管理人のお母さんは、昔、毛100パーセント用の洗剤だから大丈夫よって言って、飼い犬を洗ったことがあるにゃ。(実話です)洗い上がりがふわっふわでフローラルな香りのわんこににゃったんだよ?」
「それフローラルな香りと濡れた犬の臭いが混ざって、微妙に悪臭だったって管理人が言ってたから!犬もフローラルな香りに困惑して、洗い終わったら速攻地面をのたうち回ってたって!せっかく洗ったのによけい泥まみれになって、洗った意味が全くなかったって!」
「平気平気、気にしにゃい」
バタバタ暴れて逃げようとするスザクが煩かったのか、ロロはポチッとボタンを押した。
すると椅子から拘束用の金属ベルトが出てきて、スザクの体をがっちりホールド。
「なんでこんなトコだけ電動なのっ!?」
「シャンプーいたしま〜す」
無情にも頭に振りかけられる洗剤。漂うフローラルな香り。
「うう…咲世子さんのシャンプーはヴィ●ル●スーンなのに…」
「私は人徳で、スザク様は自業自得ではないかと」
「結構ヒドいコトをサラリと言いますね」
だがしかし、ロロのシャンプーの手つきはなかなかに気持ちの良いもので、スザクはだんだんウトウトし始めるた。
「お客様〜、どこかお痒いところはございませんかにゃ〜?」
「えっ?あ、すいません、ウトウトしてました」
「お痒いところはないですかにゃ?」
「うーん…じゃあ、右側の方がちょっと」
「かしこまりましたにゃーっ!」
シャキーン!!
「あれ?今のは何の音かな?」
「お痒いところ、僕の鋭い爪でしっかり洗いますにゃーっ!」
「ぎゃあああっ!爪っ!爪っ!爪立てないでぇぇぇ!痛い痛い痛いーっ!」
ヒィィとスザクが悲鳴を上げている所へ、また新たな客が来店した。
「あら、満員?」
「あ、カノンお姉ちゃまいらっしゃいませ〜!」
マオがちこちこ走っていく。
「今日はどういたしましょうかにゃ?」
「うふふ、マオちゃん指名でシャンプーお願いしようと思ったの」
「じゃあちょっとお待ちくださいにゃ〜。あ、指名だと指名料掛かっちゃうけどいい?」
「構わないわよ?指名料はおいくら?」
「10円ですにゃ〜」
マオとカノンの微笑ましいやり取りの最中に、また新たな客が来店。
「やあマオにゃ、私もマオにゃにシャンプーしてもらいたいな」
「あ、シュニャお兄ちゃま!指名料掛かっちゃうよ?」
「良いとも」
「じゃあ指名料100万円ね!順番だから廊下で座って待っててね?」
シュナイゼルはカノンよりも10万倍も高い指名料を請求されたにも関わらず、ニコニコしながら廊下へ出て行く。しかしそこで彼を待ち構えていたのは…
「シュナイゼル宰相閣下、指名待ちの最後尾はあちらです。静かに正座してお待ちください」
廊下の遥か彼方まで、指名待ちの正座の列が並んでいた。
「おや?君たちもマオにゃ待ちかい?」
並んでいるのはブリタリャア軍の士官だったり一般兵だったり…
「は!皇帝陛下にお願いするのは畏れ多いしロロ様は怖い。ですので我々の間ではマオ様一択であります!」
「ふぅん…帝国宰相である私に順番を譲る気は…」
「毛頭ありません!カノン様にも譲りたくはなかったのでありますが、カノン様は拳にものを言わせて1番をもぎ取りました!これ以上は譲れません!」
「では私も拳にものを言わせてみようかな?」
「ご随意にどうぞ!宰相閣下の拳なら恐るるに足らずであります!」
拳と拳の語り合いにより、シュナイゼルは最後尾決定。
その後、さっぱりにこやかな咲世子、頭から血と水の混ざった赤い筋を垂らしたスザク、ご機嫌でマオを抱っこしたカノンが店から出て来て、そのままぬこの美容室は閉店となった。
並んでいた人々は、やっぱり疲れちゃったか〜と納得したように散っていき…
「マオにゃに100万円のお小遣いをあげたと思えば…いやそれにしてもカノンに負けたのが悔しくてねぇ」
子猫達の美容室ごっこを知らない魔女が、何のこっちゃ?と首を傾げる前で、しつこく正座待機を続ける帝国宰相の姿があったとか。
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