猫のお話

□みんな大好き!ぬこぬ皇帝
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みんな大好き!ぬこぬ皇帝



ぬこの美容師さん

神聖ブリタニャア帝国―その帝都であるペンドラゴンの中心には、ぬこぬ皇帝陛下の住まう広大な宮城(みやぎじゃないよ)ペンドラゴン皇宮がある。
何時の頃からかその皇宮の奥で、不思議なお店屋さんが時折開店するようになった。
ある時は『炉端焼き ぬこ』、またある時は『撫でられ屋さん』もしくは『モフられ屋さん』等々…子猫達のその日の気分によって、様々なお店屋さんが暖簾を掲げるのである。
そして本日もまた、新たなお店屋さんが開店した。
その名も『美容室 ぬこ』
どんな気まぐれで出店されたのかはわからないが、ぬこぬ皇帝陛下を先頭に、ちったい子猫達が「いらっしゃいませ〜」なんて並んでたら、思わずお願いします!と言いたくなるのも頷ける。
最初のお客は、猫バカ騎士スザクであった。
「最初のお客様、どうぞ〜」
「シャンプーブローをお願いしたいんですけど」
「かしこまりましたにゃー」
ぬこぬ皇帝陛下の可愛らしい声に、だらしなく頬を緩ませたスザクは、美容室ぬこに足を踏み入れた。
「ではシャンプーしますので、こちらへお掛けくださいにゃ」
結構本格的なシャンプー台に案内されて、スザクは目を丸くする。
「うわぁ、ホントに美容室みたいだねぇ」
「美容師さんごっこがしたいって言ったら、ロイドが用意してくれたにゃ」
感心しながら椅子に座ると、ぬこぬ皇帝陛下がポチッとゼロスイッチのようなものを押す。
途端に椅子が、バターン!と急激に倒れた。
「うおっ!何これ!ちょっと乱暴過ぎない?」
「別に電動じゃにゃいからにゃ。スイッチ押すと後ろの支え棒が外れて倒れる仕組みにゃ」
「ロイドさんの手抜き?」
「違うにゃ。俺が電動じゃにゃくて良いって言ったにゃ。コスト削減にゃ」
「ナルホドー」
そこでぬこぬ皇帝陛下は、コホンと一つ咳払い。意識を美容師さんに切り替えたらしい。
「失礼しまーす」
スザクの顔にフワリと滴除けの布を掛け、ぬこの美容師さんによるシャンプーが始まった。
その際聞こえたミルクティー色の子猫の、濡れ手拭いで鼻と口を塞いじゃえばいいのに、と言う小さな呟きを、スザクはあえて聞こえないふり。
「お客様、苦しくにゃいですかにゃ?」
「ええと…とりあえず僕の胸に乗っかって首をキュウキュウ絞めてくるちったい子猫がいなければ、他に苦しい所はないでーす」
「あ、こらロロ、お客様の首を絞めちゃダメにゃ」
「え〜?これはシャンプーの時のマッサージだよ、兄さん」
しれっと答えるロロに、ぬこぬ皇帝陛下は、めっ、と怖い顔をした。
「マッサージはシャンプー終わった後にするものにゃ」
「は〜い」
ロロはしぶしぶスザクの上から降りた。
ぬこぬ皇帝陛下は、ロイドに作ってもらったらしいぬこサイズのシャワーヘッドを持って、一生懸命スザクの頭を濡らしていく。
「ううっ…ルルーシュかわいいよかわいいよルルーシュ…ハァハァ」
スザクの頭をびしょ濡れにしたところで、新たなお客様が来店した。
「ルルーシュ様、美容室を開店されたと聞いてシャンプーをお願いしに参りました」
「あ、咲世子!いらっしゃいませにゃ〜っ!」
ぬこぬ皇帝陛下は、シャワーヘッドを放り出して咲世子に駆け寄った。
もちろんスザクは頭びしょ濡れのまま放置。
「かしこまりました、シャンプーですね?こちらへどうぞですにゃ〜」
咲世子はスザクの隣のシャンプー台に案内されて椅子に座る。
「お椅子、倒れますにゃ」
ぬこぬ皇帝陛下がゼロスイッチをポチッ!
ああ咲世子さんも、コントみたいにバッターンと倒されるのか…とスザクは思ったが、予想に反して咲世子の座った椅子は、ウィィーンとゆっくり倒れていく。
「えっ?なんで?支え棒が外れてバッターンじゃないの?」
「にゃ?こっちの椅子は電動式にゃ。咲世子はお得意様だから、特別席にご案内したにゃ」
「ああ、ですよね〜…って開店1日目ですでにお得意様が?」
「前のお店からのお得意様にゃ。モフられ屋さんとかにゃでられ屋さんの時からのにゃ」
「あれぇ?僕もそのお店の常連だったような気が…」
「気がするだけにゃ」
「ですよね〜(泣)」
えぐえぐ泣くスザクを放置したまま、にゃんにゃんにゃーんと愉しげに咲世子のシャンプーの用意を進める。
「お客様、苦しくにゃいですかにゃ?」
「そうですね、ルルーシュ様に髪を洗って頂くことがほんの少し心苦しくはありますが、他は特に苦しくはありません」
「すいませ〜ん、放置プレイ中の僕は色々辛くて苦しいで〜す!」
「ルルーシュ様の問いかけはスザク様へのものではありません。黙りやがってくださいませ」
「ハイ…」
「それではシャンプーしますにゃ〜」
ぬこぬ皇帝陛下は、ふんふんと楽しそうに咲世子のシャンプーを始めた。
「咲世子さんのシャンプーが終わるまで、僕はこのまま放置プレイか…いや待て、咲世子さんが終わった時点で『もう疲れちゃったにゃ〜、今日は閉店にゃ〜』って…そして僕はずっと放置プレイ…あり得る!あり得るぞソレ!」
スザクがヒィィと切ない悲鳴を上げた時、濡れた頭にちったい手がかけられた。
「ヘルプ、入りまーす。お客様ぁ、覚悟はいいかにゃ?」
ちったい手の持ち主は、ニヤリと笑うロロだった。
スザク、絶体絶命の危機である。主に髪と頭皮が………


トゥービーコンなんとかですにゃ〜
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