学園小説

□Happily
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中に入っていたのは眼鏡ケースと眼鏡だった。
「もう貰ったじゃないですか」
と、かけている眼鏡を指さして言った。

「まぁそうなんだが、これは前、俺が選んだやつだ…」

「え!じゃあ高かったんじゃ…」

「いいの。俺がお前にあげたかったからさ。それとも貰ってくれないん?」
とシュンとした顔をした。

「あ、ありがとうございます。大切にしますね」
と嬉しそうな笑顔で言われた。

「お、おう」
銀八は顔を真っ赤にして顔をおさえた。

―ここが職員室でよかった―
と銀八は思った。
でなければ抱きしめていたに違いないと。

「それじゃあ姉上が待っているんで失礼します。」

「お、おう。じゃまた明日〜」

先生また「お、おう」って言いましたよ。と思いながら必死で笑いを堪えて職員室出た。

―先生が選んでくれた眼鏡。なんだか笑顔が止まらないな―

「姉上お待たせしました」
お妙を見つけ声をかけた。

「早かったのね」

「はい。坂田先生に眼鏡貰ってきただけですから」

姉の口元が引きつった。
「そう」

二人でアパートに帰り、新八は坂田が選んだ眼鏡をかけてみた。

鏡でそれを見て
―なんだか嬉しくて胸の中が暖かい感じがする。大切にしたいから家の中にいる時くらいにしよう―
と思いながらニコニコしていたら、後ろから姉に抱きしめられた。

「新ちゃんご飯は?私お腹空いちゃったわ」

「はいはい。今から作りますね」
姉をくっつけたままずるずると、台所へ向かった。

「新ちゃん」

「はい?」

「この三年間楽しく過ごせればいいわね」
姉がさらにキュッと抱きしめた。

新八は妙の手をトントン叩いて
「…あねう…く…び」

「あ、ごめんっ」
パッと離した。

ゲホゲホ言いながら姉のほうを向き
「過ごせればいいじゃなく、楽しく過ごしましょう」
少し切ない笑顔で言った。

「えぇ、そうね」
お妙も微笑で答えた。


―この高校生活だけは大切にしたい…僕のささやかな我儘だから―


END.

2007.3.10
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