Book special
□深海花
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――地上に咲いていた綺麗な花は、強い風に吹かれ深海へと堕ちていった。
その花に光は届かない。
ただ、孤独に生き、枯れるのを待つのだ。
「いやぁぁぁぁ!」
ヒュウガの耳元で、クロユリは叫んだ。
鼓膜が破れるのではないか、と心配するほどの絶叫。
しかし、クロユリを離すわけにはいけなかった。
先程よりも、抱き締める力を強くした。
「離せっ、離せぇ!」
「っ暴れないで! ずっとハルセの傍にいたって、何も変わらないんだよ!」
ハルセが心をなくしてから、クロユリはずっと彼の傍にいた。
まだ、それだけならよかったのだ。ただ、傍にいるだけなら。
しかし、『ハルセができないことは、ハルセの前では僕もしない』と、食事や睡眠を断っているのだ。
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