Book special
□Beautiful Lover
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−止めておけば良かった。
こんな思いするくらいなら−………。
「…え?」
呆然と呟く少年の前に居るのは、一人の眼鏡をかけた司教。
何やら、頼み事をしているらしい。
「お願いできませんか?」
「いえ、そういう訳では………お言葉ですが、カストル司教」
カストルと呼ばれた司教は少年の問い掛けに答える。
少年…ハクレンは言いにくそうに告げる。
「俺は男ですし…役に立たないと思います」
一体何を頼まれたのか、いきなり自分の性別と謙遜な事を言うハクレン。
…カストルは全力で否定するのだが。
「いえ!貴方だから出来るんですよ、ハクレン君!!」
「は、はぁ……」
「少々心苦しいですが、すぐ終わりますから、ね?」
どうしてもハクレンにやって欲しいカストルは、上手く捲し立て、先を促す。
「そこまで言うんでしたら…」
「ありがとうございます、感謝しますよ、ハクレン君♪」
「っ……?」
−この時、嫌な予感が思考回路を過ったのは気のせいだったのか…?
「では、そちらの部屋で着替えて来て下さいねっ」
「えと、はい…」
やって来たのは、とある空き部屋。
一体、何の頼み事だったのか。
「おい!カストル、てめぇ…」
「おや、遅かったですね、フラウ」
カストルが扉付近のベンチに座っていると、かなり怒っている様子のフラウがやってきた。
「お前、オレの許可無しに何やってんだよっ」
「?シスター服の試着に許可が要るんですか?初耳ですね」
…そう。
ハクレンが頼まれていたのは、カストル渾身の新作シスター服の試着であった。
それを何処から聞いたのかフラウが駆け付けた。
「な!あのなぁ…仮にも女装ってことに」
「…普通なら、見たいはずですが」
「うっ」
恋人のフラウとしては阻止したい所だが、見たいと言われればそこまで。
何もしなくても女性顔負けの可憐さを持っているハクレンの女装を、見たくないはずもなかったから。
「……許可は取れましたね」
「ちっくしょぉ…」
「カストルっ」
「?ラブにテイト君じゃないですか」
−そんなやり取りをしていると、今度はラブラドールとテイトがやって来た。
「折角だから見に来たよっ」
「同じくです」
「お前等までっ」
どうやら2人もハクレンを見に来たらしい。
完全に見せ物になっている事にフラウはわなわなと震える。
怒鳴ろうとするが、扉がゆっくりと開いたため、それは出来ない。
「あ、あの…やっぱり俺、こういうのは似合いませんっ……」
其処には、恥ずかしそうに部屋から出てくるハクレンが居て−………。