Book special

□私的恋愛論
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「…あっちにお土産コーナーもあるみたいですね」
「行きたいですっ」
「行きましょうか」
「「…………」」


−数十分後。
相も変わらず2人が睨み合っている中、入口で言われた通り、もう2人は水族館を存分に楽しんでいた。


「うわ、コレ綺麗」
「ガラス細工ですね」
「色々種類があるんですね…」
「ふふ、迷ってしまいますか?」


勿論、可愛い恋人達が楽しそうにしているのだから、自分達も楽しい、はず。
だが………。


「どれが良いと思います?」
「んー…どれもハクレン君に似合いますよ」
「えっ?」


自分の恋人、と、他人の恋人。
この2人があまりにも仲良くしていると、何となく良い気分はしない訳で。


「…コレと同じで、綺麗ですから」
「そ、そんな事無いですよ///」
「ありますって」
「「………」」


人間、焦ってくると周りも見えなくなる、と言うのはこの事なのだろうか。
フラウとアヤナミは今すぐ何処かへ連れ出したい欲求に駆られる。


「でもっ、バスティンさんだって似合いますよ」
「?」
「ほら、コレとかピッタリです」


そんな事を全く知らない2人は笑い合う。
限定のお菓子もある様で、今度はそちらへ向かう。


「美味しそうですねー」
「試食もありますよ」
「…テイトとミカゲ、要るかな」
「お友達なんですか?」
「はいっ」


またも楽しげに話しており、だんだんとイライラしてくる。


「はい、どうぞ」
「っ?」
「試食です」
「し、失礼します…///」


………極めつけはこれ。
所謂「あーん」と同じ事。
ブチリと、心の狭い2人の、何かが切れた。


「「…おい」」
「出るぞ」
「えっ、ちょっ…アヤナミ先輩!?」
「来い」
「っ、フラウ、どうし…」


強引に恋人の手首を掴み、出口へと向かう。
どうしたのかと声を掛けるが、全く聞く気は無いらしく、遂には外に出てしまう。


「あ、のっ、まだショーが…」
「構わん」
「ってかお前等ついてくんなよ」
「フラウっ」


−恐らく、苛立った2人の思考は全く同じなのだろう。
向かう足は、同じ方向なのだから。
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