BOOK(進撃9
□結局彼も人だってこと
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まままま、待て。
少し落ち付け自分。
この状況を把握しろ!
今こそ対巨人訓練で培った思考を集中させろ!!
…ふう。
…少し落ち着いた、かな。
「おい、なに考えてんだ春菜」
「きゃあああああこっち来ないで近付かないでぇぇ!!」
「お前が誘ったんだろう」
「わわわ、分かった!じゃあちょっと待って!」
「いつまで」
「巨人を全滅させるまで!!」
「そりゃ無理だ。待てねぇ」
「わ、わ、私だってまだ心の準備がッ!!」
「もう待てねぇって言ってんだろうが」
不機嫌そうに言うリヴァイ兵長。
私はベッドへと押し倒され、兵長がキスしようと近付いてくる。
なんとかそれを腕で制し、食い止めている所だ。
自分の所為とは言え、こんな事になるなんて…。
事の発端は数十分前へと遡る。
*
私は、リヴァイ兵長の恋人である。
…だけどちっとも私を女として見てくれない。
それならば、だ。
私から仕掛ければ、いくら兵長でもちょっと誘惑に負けて手とか出しちゃうんじゃね?
という好奇心から生まれた作戦。
まず、超薄着で兵長の部屋へと入る。(夏なので怪しまれることなし!)
そして徐にベッドへと腰掛け、無防備を装う!!
どうだ!!これなら兵長だって誘惑に乗っちゃうでしょ!!
私は自分の才能が怖い!!怖いわ!
*
…とか思ってた数十分前の私死ね。
見事、見事に兵長は誘惑に乗ってくれました。
そしてちょっと荒っぽいキスをして服に手を入れてくるもんでこれはちょっと!!とか思って止めた所存であります隊長。
…うん、これは自分がアホだった。
まさか…てか、普通に兵長が場馴れしているのを忘れてた。
キスとかめっちゃ上手いし、もうメロメロになっちゃうんだけど、服に手を入れられた瞬間ハッとしてね?
幾らなんでも私そこまではまだ望んでない!!
ちょっとちゅっちゅして恋人同士の甘い時間が欲しかっただけなのに!!
*
「兵長お邪魔しまーす。あっつー」
「…お前、なんて格好してんだ」
「えーだって熱いんですもん。よいしょっと」
「おい、何故ベッドに座る」
「え、ベッド?あー、本当だー。でもいいでしょ別に。…あー疲れた」
おお。
明らかに兵長が私の事気にしてるよ!!
苛立ちか何か分かんないけど、靴のコツコツコツ、って音が聞こえるよ!!
もうひと押しかな!!
「あー…疲れた。…へいちょー、もうここに泊まっていっていいですかぁ?」
ガタン。
あ、兵長が席立った。
うわ、わ、こっち来るよ。
無表情で私の顎を掴んで口づけた。
「んっ…、ふ…」
どぇえぇ!?舌入ってきたけど!?
やべぇ何コレ初めてで分かんない。
兵長の服を掴んで、倒れないようにするも、肩をつかまれ簡単にベッド押し倒された。
てか、ちょ…、キス、長…!!
止めて欲しくて胸板を叩くが、無視。
あ…、酸素が無くなってきた…。
なんか気分が…。
とか思った危ない地点で唇を離される。
「ッは、…へい、ちょ…」
「よくも俺の理性壊してくれたな?今日は存分に可愛がってやるよ」
理性って!!
てかまあそうなんだけど!理性壊すためにやってたんですけど!!
まさか本当にブロークンできるとは思ってませんでしたよ私なんかが!!
「や、あの、…えと……兵長!!」
「何だ」
こ、こええ!!
なんでそんな眉間に皺寄ってんの?
「あのーこれはそのっですね…!!」
「…」
うわー絶対苛々してる…。
早く言え、次の事が出来ないだろう、っていう無言の圧力しっかりと伝わってくる…。
ああもう、何を言えばいいの…!?
…っく、えーい適当に…!!
「へっ…兵長…!!……好きです!!」
「…」
KIYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
私死んだ!!寄りにも寄って何言っちゃってんのバカ!!バカバカ!!
ほら兵長もなんか驚いてらっしゃるうう!!
「…お前、俺の事本気で煽ってんのか?」
「ですよねーそうなりますよねー!ごめんなさい子供の浅知恵で!!萎えちゃうよね!」
でも本当に萎えちゃって下さい!とか考えてる私。
「違う」
へ、と間抜けな声を出す私。
兵長が私を見詰めている。
そして、分からない私を見てふっと笑った。
「お前は馬鹿で可愛いな」
「…――え、…ってあのどこに手を入れてらっしゃるんですかぁぁ!!」
きたって何!!
なににきたっていうの!!
もう訳が分からん状態でとりあえず抵抗。
*
そして冒頭へ至る。
「下手な誘い方しやがって…」
「うんごめんなさい!!反省します謝りますから!…だから見逃して?…お願い!」
「無理だ」
「へいちょぉぉおお!!」
「諦めて流されろ。女は初体験そんなもんだ」
「そんな初体験いやぁあああああああ!!もっとお互いを分かり会ってから…、!!」
「俺は目の前にご馳走があるのを見逃せるほど人がなってねぇんだが」
「あ、じゃ…じゃあ、明日!!明日までになんとかッ、んっ」
私の話しの途中で、痺れを切らしたかのようにキスを落とす。
絶句して、この間ハンジが「兵長は絶倫だから気を付けろ」など言っていたっけ。
ああ馬鹿。
なんで今思い出しちゃんだ…。
兵長はぺろり、と舌を出して唇を舐めた。
「今夜は寝かせねぇ」
…翌朝。
動けなくて、私の分の仕事は兵長にやってもらったのは言うまでもない。