僕らのVesttaste!
□混乱
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はぁ、とため息をつく。
店が終わり、片付けも一通り終わった所で、私はリビングでゆっくりとしていた。
でも、どうしても私のお母さんの事が頭から離れなくて。
夕暮れの所為で出来る影を、じっと見詰めていた。
もう嘘はつかない。デントさんと乗り越えられる事は全て。乗り越えるんだもん。
けど。
私の身内の出来ごとは、本当にデントさん達には関係ないんじゃないか?
もちろん隠し事はしないつもりだ。
だけど、今回の件は、私一人のもの。
デントさん達は一切関係ない。
…はあ、どうしよ…。
こんな時に、誰も居ないってちょっと寂しいかも…。
確かに、今は一人がいいけど、それとはなんとなく違う寂しさ。
家族には、会いたくないけど。
実を言えば、私は親の性格さえ直してもらえれば常時問題ないのだ。
そう、性格さえ。
それだけ?って思う人も多いと思うけど、私にとってそれはとても重要。
変わってしまったんだ。ある日、唐突に。
もちろん小さい頃は大好きだった。それゆえに、家族が居なくなればいいと思っていた理由は、大好きだったから、という可愛い理由。
大好きだから、居なくなった時に辛い。それが嫌だから、思い出が募る前に居なくなって欲しかった。
でも今は違う。
お父さんは、とにかく私を外国の大手企業の息子と結婚させたがる。その為に勉強をしろ、と執拗以上に命令してくるのだ。
お母さんは、そんなお父さんにゾッコンで…、私を、見てくれない…。
だから嫌なんだ…。
家族なんて…、大っ嫌い…。
居なくなっちゃえばいい…!
だって私には、デントさんが居るもの。
お父さんなんて、嫌いだ。
お母さんなんて、嫌いだ。
「春菜、お母さんお花でかんむり作ったのよ!コレあげるわ」
…居なくなっちゃえば、いいんだ…。
「…春菜?」
デントさんの声。
振り向けば、心配そうにこちらを覗き込むデントさんが居た。
私は震えそうな声を押さえて、俯いた。
そうだ、私にはデントさんさえいればいいんだ。
家族なんていらない。
私の家族は、…そう、此処に。
あるもの。
「どうしたの、春菜?」
「…え?」
デントさんの手のひらが、私の頬を掠める。
え、…あ、れ…?
「…な、みだ…?」
「どうして…泣いてるんだい?」
「…デントさっ…、」
私は、泣いてた。
どうして?家族が嫌過ぎて?
連れ戻されるのが嫌だったから?
…それもあるけど、多分、一番の原因は。
私の心の奥底で、まだ家族を愛する気持ちがあるからだろう。
こんなに嫌悪しているっていうのに。
あんな酷い両親だっていうのに。
また昔の様に戻って欲しい。
そう願わずには居られないらしい、私という人物は。
「っ、ごめんなさい!なんでもないです!」
「無理しないで。明らかに我慢してるでしょ」
「…ちが!これは、ちょっと疲れて!」
「……疲れたのなら、少し寝た方がいいんじゃない?」
「えっ…」
デントさんは、私をベッドへぐいっと押し倒すと、そのまま布団をかけてくれた。
「安心して、寝ていいから」
パタン…
…。
ちょっと寂しい、なんて。
そんなこと、想ってない。
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