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□3日目
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買い物を無事に済ませた次の日。

少し寝坊して家を出て学校に行こうとすると、晴矢と鉢合わせしてしまった。

制服か。…くそ、似合ってるのが凄く憎らしい。

しかもなにそのカッコイイ鞄の持ち方!

鞄を脇に挟みつつ、両手はポケットだなんて!

きー!!ドラマの主人公か!

ぱちっと目があった所で、勢い良く視線を外す。

やばいやばい…コイツと朝関わるとろくな事ないからな…。

急いでスタスタ歩いて学校へ行こうとすると、後ろから晴矢が。


「おーいブス。髪の毛焼きそばになってるぞ?」


ホントろくな事ないわー。






「今日寝坊しただろ?」


笑いを堪えながら、晴矢が聞いてくる。

私は完全無視。

くしを使って全力で髪の毛を直し中。


「おいブス無視かよ。この俺が話しかけてやってんのに」


ブチ。


「あーもううるっさいなぁ!朝から私の事ブスブスって!!」


「本当の事だからしょうがないだろ?ていうかホラ、早く髪直せよ」


「……………チッ」


舌うちをして、思いっきり睨んでからまたくしを通す。

通学路一緒っていうのが更に最悪だわ。


「女子が舌うちするなよ。そんなんだから彼氏ができないんだぞ」


「う…うるさい!黙れ!喋るな!!」


「あー?んだとこの野郎。この俺様に命令?いい身分だな」


うあ…。

なんか知らないけどヤバいかも?

こうなると、晴矢を止められるのは吹雪くんしか居ないよね?

でも今は通学中…。

コイツを止められる人なんて…!!


「さーて。どう調教(いじめ)て欲しい?お前は確か痛いのが好きだったよなぁ…?」


言ってません、そんな事。



てかちょっと待って。

”いじめて“が漢字で”調教“になってるんですけど…!!

やべ、殺されるんじゃない?私。

今日命日?



…なんて、私が髪を直すのも忘れて晴矢から逃げようとしていると…。





「おい、悪ふざけはそこまでにしとけよ」



薔薇が散りそうな勢いで、颯爽と風丸くんが現れた。

え、風丸くん!?え!?

通学路、ここだったの!?



「やあ。おはよう、神埼さん」


「あ…、お、おはようっ」


晴矢は影で舌うちをしていた。

…おいおい、怖いよまじで…。



「晴矢、お前こんな朝遅かったか?」


風丸くんの一言。

え?どういう意味?


「お前、何時もこの時間帯なら、学校だろ?」


「あー、気分」


…まぁ、確かに。

いっつもと言っていい程、私と晴矢は一緒に登校してるからなぁ。

今日はたまたま寝坊しちゃって。

なんか知らないけど晴矢も居たけど。


…。…でも、今日は寝坊して良かったかも!

こうして風丸くんと朝、一緒に歩けるなんて夢みたいだ…!



「…うぜー」


ぼそっと聞こえた晴矢の声。

もちろん、私の怒りはめらっと燃え上がる。

「今なんて言った?」


「は?朝から乙女ですか?はい、うざーい。自重しろー」


「んだとこの…」


と言いかけて、ハッとする。

そうだ、今日は風丸くんが居るんだ。

大人しくしてないと…乱暴な女だと思われる!

私は咳払いをして、言いなおす。


「…べ、別に良いでしょ?今日くらい乙女でも。女の子なんだし」


「え、ごめん。なんかよく聞こえなかったけど、誰が女の子って?」


「……」


怒りで体が震える。

わぁ…、我慢するとこういう事になるんだね。


「え?”私は凶暴女です“?」


「言ってない!!もう、晴矢の馬鹿!!」


「晴矢、女の子に向かってそれはないだろ」


苦笑しながら風丸くんが私をかばってくれた!

きゅん…。

風丸くん…、私の事女の子って…!

まともに接してくれる男の子なんて…吹雪くん以来かも…。


「コイツは女じゃねーからいーんだよ」

「よくないだろ。それに、神埼さんは凄く可愛いと思うし」


ドキッ

その言葉に、心臓がはねたのは言うまでもない。

か、風丸くん!!可愛いって…照れるよっ!


はぁ…、どうしよ…。

お世辞でも、すっごい嬉しいなんて…。



「神埼さんって、部活とかしてるのか?」


「えっ、ううん、今はしてないっ」


「そっか」


「風丸くんは…サッカー部だよね?」


「ああ。ってよく知ってるな」


「まぁ…色々と学校で風丸くんの噂してるしね…」


「…あぁ…。…まぁ、俺はそんなに言うほどじゃないんだけどな」


苦笑して見せる風丸くん。

…はぁ、そんな謙虚な所もかっこよすぎるよ。


「かっこいいよ!すごくっ」


私の気迫に驚く風丸くん。

だけど、次の瞬間優しく微笑んで、


「ありがとう」


そう言った。

もちろん私のハートは既に射抜かれちゃって。

その笑顔…、反則。






そんな訳で、登校中ずっと風丸くんのペースだった。

もう私はめっろめろ。風丸くんに落ちない女の子は居ないよね。うん。居ない。


…ただ一人、晴矢がつまんない顔してたけど、そんな事よりも今、頭は風丸くんでいっぱいです…。

はぅ…。

メアドまで交換しちゃった…。



急展開で、こんなに風丸くんに近付いちゃっていいのだろうか…。

幸せすぎて他の女の子に嫉妬とかされちゃうんじゃないだろうか、私…。



…それでもいいような気がしてきた。




















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