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□3日目
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今日は休みだ。

休みの日。だから買い物に行こうと思う。

なんでかって?

いや、別に理由はないんだけど、なんかそんな気分で。

あはは、あるよね。

ベッド起きたら空がいい感じに綺麗で。

それで買い物行こうって思うこと。



え、ない?

まあ、私はそんな気分になるんです。





私服を選び、着替える途中昨日の事を思い出した。


昨日…、マックで、晴矢に好きな子を聞いた時の事。













「…好きな人ぉ?」


「うんそう。居るんでしょ?晴矢」


「…べっつに」


「その反応が怪しいんだけど!教えろ!こら!」


「あーうるさいうるさいうざい」


「酷い!」


「…大体、お前朝からなに?」


「…え、なにって…なにが」


「俺の好きなタイプ聞いたりだとか。いきなり彼女作れだとか。挙句には話を盗み聞きするだとか!」


「うっ…」


「まじでなんなの?俺の事が好きなのか、俺の事が嫌いなのか意味が分かんねーんだけど!」



その瞬間ぼんっと赤くなる私の顔。

す…好き!?

私が晴矢の事、を…!?


あ、あり得ないって…!!

そんなこと!



「なっ、ないない!あり得ない!私が晴矢の事好きとかまじでないから!!」


「…何ソレ。照れ隠し?実は本当に俺の事好きなの?」


「違うっつーの」


意地悪そうに笑った晴矢にぴしゃりと言い放った。




「…ってか晴矢の好きな人、まじで誰なの?」


2つ目のハンバーガーに手をかけてから聞いた。

晴矢は未だにポテトをばくばく食べている。

…これ、割り勘してもらうべきだよね。


「…それ、俺は言わなきゃいけねーの?」


「まぁ…ポテト食べたし」


はぁーとため息を吐いて、晴矢が呆れた目で私を見てくる。

え、ポテト提供してあげてんのになにその態度。


「じゃあ聞くけど、お前は好きな奴とかいねーの?」

「…わ、私に好きな人!?」


急な展開にびっくりだ。

思わず後ずさってしまう。


ま、まぁ…居ない事は、ない。

好きと言っても、憧れ程度だと自分では思っているが。


…。


…同じクラスで、私の斜め前の席に座っている風丸くん。

爽やか系男子の代表みたいな人で。

もちろん晴矢みたいに表裏なんてある訳がなく。

男女平等誰にでも優しい、とても理想的な王子様。

おまけに1、2、3、全ての学年から噂されている超モテ王子様なのだ!


まぁ、元々この学校には3トップという、学校で最ももてている3人に与えられる称号があるんだけど。

風丸くんはあたりまえにその一人でしょ。

で、問題なのは憎き晴矢も3トップ入りしてるという事だ。

なんで!?なんで晴矢が!!意味が分からない、本当に。

あんなのただの垂らしでしょうが。


…とまあ、晴矢の事は置いておいて。

最後の一人は、ルックスだけは最高に王子様なヒロト。

問題なのはあの性格だよね。

彼女が出来てもすぐ浮気したり、私を誘惑したり。

なんで私なのかな…そこもちょっとよく分からない。

あ、そういえばヒロトの彼女って誰なんだろう…?

ヒロトの彼女だから、相当可愛いことは間違いないよね。

今度写メでも見せてもらおうかなー。

ヒロトならきっとすぐ見せてくれるよね。


…そういえば、今まで雲の上の存在だった風丸くんも、好きな人って居るのかな?

居たとしたらちょっとショックかも。

でもまぁ、私なんかの手の届かない存在だしなぁ。

どうせ、知ったって知らなくたってあんまり変わらないけど…。

興味は、ある。うん。


…と、いう訳で。





「…まぁ、居ないと言えば嘘になる…かも」


「はぁ!?」


何故か晴矢がテーブルをバン、と叩いて立ち上がる。

ど、どうしたよ急に。
この話しの展開でそんな粗ぶる要素あったっけ!?


「誰だよ」


「な!なんで晴矢に言わなくちゃいけないの?」


「知りたいから?」


「そんな単純な理由で教える気にならねーよ!!」


「じゃあいじめてやるから」


「やったー!…とでも言うと思ってんの?馬鹿じゃないの?死ぬの?」



ホント思考回路おかしいでしょ。

なに、Sって常に誰かを苛めてたいものなの?


「てか、おま、それマジで言ってんの?」


今頃になって晴矢が真顔で聞いてくる。


「だからホントだって!…多分」


「じゃあ誰なのか教えろよ!」


「嫌って言ってるでしょ!」


「聞き分けのねーブスだな…」


「んだとごるァ!!女子に向かってその言葉遣いはねぇだろが!!」


「その口調で女子を名乗るなよ!せめて直せば!?」


「もー!うるさいなぁ!!」


「はぁ?この、クラスでも学校でも1位の俺様にうるさいとか…、まじで言ってんのかよ」


「まじですよーだ!!しかも、私の好きな人は晴矢よりもカッコイイ3トップですからー!!」



晴矢にべー、と舌を出して威嚇する。

そして、妙ににやつく晴矢を見て、絶句。


しまった。


自分は今、なんて言った?


”私の好きな人は晴矢よりもカッコイイ3トップ“


おいぃぃぃ!!

これじゃもう、自分で好きな人言ったようなもんじゃん!!


頭を抱えてテーブルに突っ伏していると、晴矢が横からぼそっと呟く。


「”私の好きな人は、晴矢よりもカッコイイ3トップですからー“ねぇ…?」


私の台詞を往復して馬鹿にしてくる。

今更ながらに気付いた。

こいつにはめられたって事に!!

やばい…、感情に身を任せてコイツと会話したら危険だ…!


「ふーん…?俺よりもカッコイイんだー…」


「そ、それはもちろん!」


そこだけはしっかりと宣言しておく。

あのオーラは、晴矢じゃ出せない!絶対に!


「じゃあ、ヒロトか風丸ってことか…」


「…」


あえてだんまり。何も喋りたくありません。

だけどコイツの頭のキレは半端じゃなく。


「お前が憧れそうな王子様っつったら…風丸だろうな?」


「ぶっ!!ごほっ、ごほっ!」


「……お前………ちょっとは隠せよ…」


「う、うるさいな!!」



余りの的中さに、飲んでいたファンタを吹き出してしまった。

ごほごほと咳き込む私に、更ににやつく晴矢。

ああもう、駄目だ。

こんな男に私の好きな人がばれたんじゃ、終わる。

しかも相手はあの雲の上の様な存在。

叶わないって、分かってるんだけどなぁ。



「はーあ…」


「お前はよく頑張ったよ」


「いやいや!まだ失恋してませんから!」


「諦めた方が身のためだと、俺は思うぜ?」


「つーかお前のせいで落ち込んでんだよこんちくしょー!!」












…てな感じで、その後は晴矢が意外にもポテト追加で奢ってくれて。

帰りもなんとなーくだけど優しかった…かも?

けど暴言でプラマイゼロ。あれ絶対直した方がいいわー、うん。

…ってか、よく考えれば、暴言吐くのって私にだけだよね…。


はぁ…。


ほんと、晴矢なんてだいっきらいなんだから…。













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