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□3日目
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今日は休みだ。
休みの日。だから買い物に行こうと思う。
なんでかって?
いや、別に理由はないんだけど、なんかそんな気分で。
あはは、あるよね。
ベッド起きたら空がいい感じに綺麗で。
それで買い物行こうって思うこと。
え、ない?
まあ、私はそんな気分になるんです。
私服を選び、着替える途中昨日の事を思い出した。
昨日…、マックで、晴矢に好きな子を聞いた時の事。
*
「…好きな人ぉ?」
「うんそう。居るんでしょ?晴矢」
「…べっつに」
「その反応が怪しいんだけど!教えろ!こら!」
「あーうるさいうるさいうざい」
「酷い!」
「…大体、お前朝からなに?」
「…え、なにって…なにが」
「俺の好きなタイプ聞いたりだとか。いきなり彼女作れだとか。挙句には話を盗み聞きするだとか!」
「うっ…」
「まじでなんなの?俺の事が好きなのか、俺の事が嫌いなのか意味が分かんねーんだけど!」
その瞬間ぼんっと赤くなる私の顔。
す…好き!?
私が晴矢の事、を…!?
あ、あり得ないって…!!
そんなこと!
「なっ、ないない!あり得ない!私が晴矢の事好きとかまじでないから!!」
「…何ソレ。照れ隠し?実は本当に俺の事好きなの?」
「違うっつーの」
意地悪そうに笑った晴矢にぴしゃりと言い放った。
「…ってか晴矢の好きな人、まじで誰なの?」
2つ目のハンバーガーに手をかけてから聞いた。
晴矢は未だにポテトをばくばく食べている。
…これ、割り勘してもらうべきだよね。
「…それ、俺は言わなきゃいけねーの?」
「まぁ…ポテト食べたし」
はぁーとため息を吐いて、晴矢が呆れた目で私を見てくる。
え、ポテト提供してあげてんのになにその態度。
「じゃあ聞くけど、お前は好きな奴とかいねーの?」
「…わ、私に好きな人!?」
急な展開にびっくりだ。
思わず後ずさってしまう。
ま、まぁ…居ない事は、ない。
好きと言っても、憧れ程度だと自分では思っているが。
…。
…同じクラスで、私の斜め前の席に座っている風丸くん。
爽やか系男子の代表みたいな人で。
もちろん晴矢みたいに表裏なんてある訳がなく。
男女平等誰にでも優しい、とても理想的な王子様。
おまけに1、2、3、全ての学年から噂されている超モテ王子様なのだ!
まぁ、元々この学校には3トップという、学校で最ももてている3人に与えられる称号があるんだけど。
風丸くんはあたりまえにその一人でしょ。
で、問題なのは憎き晴矢も3トップ入りしてるという事だ。
なんで!?なんで晴矢が!!意味が分からない、本当に。
あんなのただの垂らしでしょうが。
…とまあ、晴矢の事は置いておいて。
最後の一人は、ルックスだけは最高に王子様なヒロト。
問題なのはあの性格だよね。
彼女が出来てもすぐ浮気したり、私を誘惑したり。
なんで私なのかな…そこもちょっとよく分からない。
あ、そういえばヒロトの彼女って誰なんだろう…?
ヒロトの彼女だから、相当可愛いことは間違いないよね。
今度写メでも見せてもらおうかなー。
ヒロトならきっとすぐ見せてくれるよね。
…そういえば、今まで雲の上の存在だった風丸くんも、好きな人って居るのかな?
居たとしたらちょっとショックかも。
でもまぁ、私なんかの手の届かない存在だしなぁ。
どうせ、知ったって知らなくたってあんまり変わらないけど…。
興味は、ある。うん。
…と、いう訳で。
「…まぁ、居ないと言えば嘘になる…かも」
「はぁ!?」
何故か晴矢がテーブルをバン、と叩いて立ち上がる。
ど、どうしたよ急に。
この話しの展開でそんな粗ぶる要素あったっけ!?
「誰だよ」
「な!なんで晴矢に言わなくちゃいけないの?」
「知りたいから?」
「そんな単純な理由で教える気にならねーよ!!」
「じゃあいじめてやるから」
「やったー!…とでも言うと思ってんの?馬鹿じゃないの?死ぬの?」
ホント思考回路おかしいでしょ。
なに、Sって常に誰かを苛めてたいものなの?
「てか、おま、それマジで言ってんの?」
今頃になって晴矢が真顔で聞いてくる。
「だからホントだって!…多分」
「じゃあ誰なのか教えろよ!」
「嫌って言ってるでしょ!」
「聞き分けのねーブスだな…」
「んだとごるァ!!女子に向かってその言葉遣いはねぇだろが!!」
「その口調で女子を名乗るなよ!せめて直せば!?」
「もー!うるさいなぁ!!」
「はぁ?この、クラスでも学校でも1位の俺様にうるさいとか…、まじで言ってんのかよ」
「まじですよーだ!!しかも、私の好きな人は晴矢よりもカッコイイ3トップですからー!!」
晴矢にべー、と舌を出して威嚇する。
そして、妙ににやつく晴矢を見て、絶句。
しまった。
自分は今、なんて言った?
”私の好きな人は晴矢よりもカッコイイ3トップ“
おいぃぃぃ!!
これじゃもう、自分で好きな人言ったようなもんじゃん!!
頭を抱えてテーブルに突っ伏していると、晴矢が横からぼそっと呟く。
「”私の好きな人は、晴矢よりもカッコイイ3トップですからー“ねぇ…?」
私の台詞を往復して馬鹿にしてくる。
今更ながらに気付いた。
こいつにはめられたって事に!!
やばい…、感情に身を任せてコイツと会話したら危険だ…!
「ふーん…?俺よりもカッコイイんだー…」
「そ、それはもちろん!」
そこだけはしっかりと宣言しておく。
あのオーラは、晴矢じゃ出せない!絶対に!
「じゃあ、ヒロトか風丸ってことか…」
「…」
あえてだんまり。何も喋りたくありません。
だけどコイツの頭のキレは半端じゃなく。
「お前が憧れそうな王子様っつったら…風丸だろうな?」
「ぶっ!!ごほっ、ごほっ!」
「……お前………ちょっとは隠せよ…」
「う、うるさいな!!」
余りの的中さに、飲んでいたファンタを吹き出してしまった。
ごほごほと咳き込む私に、更ににやつく晴矢。
ああもう、駄目だ。
こんな男に私の好きな人がばれたんじゃ、終わる。
しかも相手はあの雲の上の様な存在。
叶わないって、分かってるんだけどなぁ。
「はーあ…」
「お前はよく頑張ったよ」
「いやいや!まだ失恋してませんから!」
「諦めた方が身のためだと、俺は思うぜ?」
「つーかお前のせいで落ち込んでんだよこんちくしょー!!」
*
…てな感じで、その後は晴矢が意外にもポテト追加で奢ってくれて。
帰りもなんとなーくだけど優しかった…かも?
けど暴言でプラマイゼロ。あれ絶対直した方がいいわー、うん。
…ってか、よく考えれば、暴言吐くのって私にだけだよね…。
はぁ…。
ほんと、晴矢なんてだいっきらいなんだから…。