BOOK
□1日目
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人には、色んな性格がある。
優しい人、面白い人、怖い人、気持ち悪い人、意地悪な人。
そして、そんなもので人を図るのはとても良くない。
少なくとも私は、そんなもので人を見る奴は嫌いです。てか死ね。
…だから、その人の生まれ持ったものを否定、または嘲笑うかのような仕打ちをする奴は、きっと何時か天罰を喰らうんだと、私は思っている。
誰から?いやいや、神様でしょ。うん。
…いや、知らないけどね?本当に天罰下ってるのかどうか、知らないけどね?
でも、少なくとも私はそう思ってる訳で。
とりあえず、今目の前に居るコイツ。
「おー、ブス、おはようおはよう。今日も気持ち悪い顔してんなあ、整形しろよ」
南雲晴矢に、天罰が下ればいいと、思ってます。
朝っぱらから人の顔にいちゃもんをつけてきやがって。
ていうか、家近すぎんだよ!なんだよ隣って!
幼馴染みか!!
「生憎そんなお金持ってません」
「じゃあ俺が整形してやろう」
「なんでだよ!!」
「えー」
「えーじゃないし! 目が本気ですよ!?」
なんか物凄く光ってた。
ヤバい、アレは獲物を追う目だ!
私は背筋に冷たいものを感じ、足早に学校への道を歩く。
「車にひかれて死ね(その先交通事故多いらしいから気を付けろよー)」
「思ってる事と喋ってる事逆じゃないかなあ!!お前が死ね!」
南雲晴矢。
中学3年生。A型。
好きなもの。
女、女、サッカー。
嫌いなもの。
積極的な女子、私。
性格、ドS。
こんな最悪な奴と知り合ってしまった私って、もしかするとどんなジュリエットよりも悲劇なんじゃなかろうか。
「春菜ちゃん、おはよう」
「あ、おはようヒロト」
基山ヒロト。
中学3年生。A型。
好きなもの。
女、セックス、サッカー。
嫌いなもの。
南雲、表紙と中身が違うエロ本。
性格、変態。勘違いが激しい。妄想癖あり。
「春菜ちゃん!ついに俺と結婚してくれる気になったんだね!」
「は?」
ヒロトが私の両手を手に取り、目を輝かせた。
急な展開についていけない私。
「ど、どういう事!?」
「いっつも南雲と学校来てるのに、今日は一人で来たでしょ!それって俺の事が好きだから俺に勘違いして欲しくなくてなんだよね!分かる、分かるよ春菜ちゃん。俺も好き。大好き。結婚しよう!あ、その前にラブホ行っ「うるさいぞヒロトいい加減にしろ!」
物凄い早さでぺらぺらと喋っていたヒロトが、横からの声で遮られた。
私の隣の席に座り、小説を読んでいた男子クラスメイト。
「もう、なんで邪魔するのさ。今大事なアプローチを仕掛けてたのに」
「お前はうるさいんだ。読書の邪魔をする奴なんて死んでしまえばいい」
「酷っ!」
涼野風介。
中学3年生。C型。
好きなもの。
アイス、かき氷、サッカー。
嫌いなもの。
読書の邪魔をする奴、うるさい奴、騒がしい女子。
性格、冷静沈着と同時に重要なツッコミ要因。ちなみにドSでもある。
「…あ、はは…、おはよう風介…」
「なんだ、春菜か。…?今日は晴矢と一緒に来てない様だな」
「晴矢なら交通事故で車に轢かれて病院に行きました(大嘘)」
「だぁれが車に轢かれただって?」
げ。
この声は。
声のする方へ顔を向けると、不機嫌極まりない表情で、晴矢が教室の入り口に立っており怪しい笑みを浮かべている。
こ、こええええええ!
私はサッと風介の後ろに隠れた。
「おいテメェ、変態ヒロト!」
「え、何?馬鹿晴矢」
晴矢の怒声とは裏腹に、冷静に返すヒロト。
ま、また始まった。
朝は絶対あるよね、二人の罵り合い。
ホントうんざりだわ…。
「なに俺のおもちゃに手ぇ出してんだよ!」
「私おもちゃ扱い!?」
「はあ?いつ晴矢のって決まった訳?春菜は俺のお嫁さんなんだけど」
「それこそいつ決まった!!」
「とにかく春菜、こっち来い!」
「なんで!?何がとにかく!?」
「駄目だよ、春菜。俺の所に来て?」
きゅ、究極の選択…!!
どっちも嫌なので、首を横に振ってみると、晴矢からは鋭く睨まれ、ヒロトはただにっこにこしていた。
うん、それ…逆に怖いですから。
「おい、どうでもいいが、何故私の後ろに隠れる」
「だだだだって!風介が一番安全なんだもん!」
そういうと、風介は嘆息して額を抑えていた。
…風介、ごめん。いつもこの二人の相手をしてるだけでストレスがたまるっていうのに…。
新しいストレスの、追加です。はい。
後で頭痛薬買ってくるから許してね。
「ちっ、止めだ止め!ナンパしてくる!」
頭をかきながらそんなことを言って教室から出ていく晴矢。
ヒロトも意気消沈したかのように大人しくなり、俺も遊んでくる、と私に手を振ってから教室から出ていった。
二人とも、女好きだなマジで。
大体、ヒロトは彼女居るだろうに。
彼女居るっていうのに、私みたいな顔もよくないしスタイルもよくない女に、結婚して!とか言ってていいのだろうか。
それに、晴矢は私の事をおもちゃと思ってるし。
…周りの女の子からは一線引かれるし…、本当散々だよ。
残った風介が、ぼそりと呟く。
「…あの二人、実は仲良いんじゃないか?」
「…うん…若干思った」
「ていうか何時までひっついてるんだ。熱い。邪魔だ。離れろ」
「酷すぎる!?そんなぼろくそ言わなくていいじゃん…」
「私は読書がしたいんだ。離れろと言っている」
渋々離れ、着席する風介と本を見詰める。
「ホント本好きだね。飽きないの?」
「基本的に飽きない。ただ、本は読んでおいたほうがいいから読んでいるだけだ。面白いもくそもない」
ふうん。
私は本嫌いだから絶対風介が読んでるような厚いものは読めないと思う。
「よくそんな分厚い本読めるね」
「はあ?分厚いって…、これまだ小さい方だし200ページとか300ページとかだぞ?」
「に、にひゃく!?うわわ、絶対無理無理!ちょ、風介すげえな!」
「…。…お前、馬鹿だろ」
「は!?」