気弱彼女とヤンキー彼氏
□2日目
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授業中。
黒板に書かれている文字を必死に移す。
勉強だけは並みに出来る私だけど、他の事は何をやらしてもてんで駄目。
お母さんとお父さんはこんな私をちゃんと愛してくれてるけど、いとこのお兄ちゃんは冷たいから、いっつも私を馬鹿にしてくる。
…よく友達にドジって言われるからなあ。
それに私、男の人あんまり好きじゃないし。
ふう、と軽くため息をついて、時計を見る。
後1分で終わり…か。
…はあ。
昨日は散々だったなあ…。
この学校で一番怖い南雲先輩にぶつかっちゃったし…。
許してくれた(?)けど、チビって言われてちょっとショックだったし…。
あーもう、無理無理。
私にはあんな不良とかヤンキーとかそんな事を普通に出来る人の頭が分かりません!
絶対頭おかしいよ…ぶつぶつ。
きーんこーんかーんこーん…
あ、チャイム鳴った。
終わりだ終わり!
一気にざわつき出すクラスに、少しのイラつきを覚えとりあえず廊下へ出ようと席を断つ。
そうだ、私先生に呼ばれてるんだった。
職員室行かなきゃ、職員室。
ガラリ。
「へ?」
私がまだ手をかけていない扉が、勝手に開く。
いやいやいや、まだあけて無いんですけど。
誰があけたのだろう…顔をあげれば。
「お、丁度いいじゃん」
南雲先輩が居ました。
「…!!!!」
…な、ななな、なんで、こんな所に南雲先輩が!
……お、落ち付け私!
とりあえず、用は私じゃない。邪魔だ邪魔、こんなチビが南雲先輩の目の前にいたら殺される。
そう思って、スス、と南雲せんぱいと扉の間を通り抜けて廊下へ出る。
ふぅ…怖いなあ…なんか、顔はものすごくかっこいいんだけど…乱れた制服とか、耳のピアスとか見てると震えが止まらなくなる。
ピアスとか…痛くないのか…。
「いやいや、神埼春菜だよな?」
「うぇ!?」
驚いて自分でも今まで出した事がないような声が出てしまった。
「…わ、わわ、私…でしょうか…?」
「そう、ってかなんでそんな震えてんの?」
貴方が怖いからです。
なんて言えない自分、臆病者です。
「な、なんのご用でしょうか…」
怖いよー、怖いよー!
うあーん、いとこのお兄ちゃん助けてー!
あううー、泣きそうだよー。
「…えーっと、簡単に言うと、恋したんだわ、多分」
「…はい?」
恋。恋?
誰にでしょう。ていうかそんな事私に言われても困るのですがっ!
「だ…誰、に…?……ですか…?」
「や、だからお前に」
「…………はい?」
WHAT?
…お前?
オマエ…って…誰?
…まさか…。
……まさか……!
「あ、の…、私…ですか…?」
「うんそう。ってか、お前以外に誰がいんだよ」
や、あの。
意味が分からないんですけど!
ほらもう、今絶対顔赤いし!
大体、この学校で最もモテているTOP3に入ってる人がなんで私なんかに!
廊下はざわつき始めている。
そりゃそうだ、こんな1年生の教室に、あの南雲晴矢先輩がいるのだから。
女子達がきゃーきゃー喚いているのが妙に耳につく。
「…私に、恋をしたって事ですか…?」
「だから、そう言ってるじゃん」
「…ぇぇええええ!!!」
なんで今頃叫んでるの自分!
「な、なんで!?どうして!?」
「なんでって聞かれてもなあ…、一目惚れ?」
「わ、私なんかより可愛い子いっぱいいます!」
「その可愛い子よりもお前を選んだんじゃねぇか」
な、なんか高圧的な人だな…。
って、そんな事よりも!
「わ、私はっ…地味だし、な、南雲先輩に釣り合いませんよ…」
駄目なんだ。
私と雲先輩はじゃ生きてる世界が違う。
世界観も違う、思ってる事だって、環境だって。
「…」
南雲先輩がなにやら考えこんでいる。
…ど、どうしたのだろう。
…はっ、もしかして私をしばくリンチの仕方とか…!?
いやぁあぁあぁあぁ、いとこのお兄ちゃんー!
私、今日が命日なんですね。
「…んじゃ、こーしよう」
「…ふぇ…」
「2週間俺と付き合って、詰まらなかったら俺と別れる。で、もし楽しかったらそのまま恋人に昇格。これでど?」
ど?って言われても…。
「いい条件だと思うんだけどなあ。お前って男嫌いなんだろ?だったらこの2週間で俺が直してやってもいいんだけどなあ」
にぃ、と口角あげて笑う南雲先輩。
むぐぐ…、
で、でも…私、不良とか、怖いし…。
…。よし。
「わ、分かりました…」
「!……お、おう。んじゃ、今日から俺は、お前の彼女な」
「…ふえっ…うわーーーーん!」
「なんで泣くの!?」
あうぅ、緊張がとけたら涙が出てきた。
南雲先輩って…とっても整った顔をしていて、モデルなんて楽勝にこなせる気がする。
でも、この人は、そういうのじゃなくて。
なんかこう…、学校でのアイドル、みたいな。
…でも、ですね。
いくらアイドルだかモデルだか言ってもですね。
怖いものは怖い、不良なものは不良なんですよ。
あー、今となって後悔してきた!
なんで私あんなにモテてる南雲先輩に告られたの?
別に可愛くもないし、見た目昭和なのに。
ほんっと、不良の人の頭の中ってどうなってるのか見てみたい…。