BOOK
□す
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「春菜…?」
俺が一緒に探してやるから。
この言葉、貴方は覚えてますか?
もしもその気持ちが本当なら、私は貴方と共に歩みます。
「…、トウヤ様」
ノボリとの会話を遮って、トウヤは現れた。
でも、声はしたのに、何処に居るのか分からない。
不安になった。
私は、自分の目が腫れているのも気にせずに、辺りを見回す。
その時に、ノボリの手を振り払ってしまった事も、気付かなかった。
「…、春菜、50メートル先です」
苦笑したノボリが、私に指差しで教えてくれた。
ちょっと離れていて分かりづらかったけれど、そこにはトウヤが立っていた。
「…トウヤ…だ」
「時間の電車に乗ってなかったから、なんかアクシデントがあったのかと思ったけど、そういう事だったのかよ」
自嘲的な笑みを浮かべるトウヤ。
私は首を振った。
「ちが、う」
「…いや、実は俺、知ってたからさ」
トウヤは顔を俯けながら話しだした。
「なんとなくだけど、春菜がノボリさんの事、好きなんだなって」
「…ちがうんだよ」
「俺、馬鹿だよな。気付いてたのに、分かってたのに。…やっぱり俺は、2年前のあの日から、ずっと…」
「違う!!」
私の叫びで、その場が静かになった。
ノボリが驚いて私を見ている。
トウヤだって、顔をあげている。
周りの反応なんかどうだっていい。
私はただ、トウヤに向かって歩き出した。
「…春菜、?」
「…トウヤ。私、全部知ってる」
「…はは、ノボリさん?…言わないでくれって、あんなに頼んだじゃないッスか」
「私、言っておりませんよ?」
クダリ張りの笑顔を向けるノボリ。
トウヤはそこでもまた、乾いた笑いを零した。
「あのね。率直に言う。私、ここから離れたくない」
「…そう、みたいだな」
にっこり。
トウヤは、あのときみたいな優しい笑みを浮かべる。
全く、何時ものブラックトウヤは何処に行ったんだろうね。
こんな時だけ優しいなんて、意地悪だよ。
「でも」
私はトウヤに抱きついた。
小さいって分かってる。
トウヤの肩にがんばって手をまわして、強く、強く抱きしめる。
「な、」
「トウヤが居るから、大丈夫なの」
最初っから、私は一人なんかじゃなかった。
気付いた時にはいつもトウヤが傍に居てくれてて。
その事が分からなかったなんて、あのときの私はなんて幼稚で、子供なんだろう。
馬鹿だ。
「…だから、帰ろう? 私、トウヤに守って欲しい」
「…!」
「トウヤに守られたいの」
トウヤは私に言ってくれた。
私が欲しいものを一緒に探してくるって。
それはね、涙が出ても足りないくらい、本当に嬉しかったんだ。
ノボリとの別れは辛いけど。
私は、ずっと私を想ってくれたトウヤと歩く。
「ノボリ。また、会おうね」
「その時は覚悟していてくださいまし」
「へ?」
ノボリがくすり、と笑った。
「Because I have you hear my feeling」
トウヤのポケモンで、カナコタウンへと向かう。
その途中、私はずっとトウヤに抱きついてた。
「…トウヤ」
「ん?」
「ありがとう」
「…さっきからそればっかりだな」
「だって、すごい嬉しいから」
「それはもう分かったって。…それより、他に言う事ねーの?」
そう言ったトウヤの顔は、すっごく真っ赤だった。
私は、抱き締める力を強くして、トウヤの体に体重を預ける。
「大好き」
最初から決まっていたのかもしれないね。
これは運命だったのかも。
(付き合って下さい)
(いや無理でしょ)
(え?この流れで?)
(まあ、結婚なら許してやらない事もないけど)
愛たいです。