BOOK

□し
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朝、やっぱりテーブルには朝ご飯がおいてあった。

今日はフレンチトースト。

流石ノボリは、女の子のプライドを打ち砕くのが得意なようで。

美味しく頂くと、私は何時ものメモ書きに書いてある字が多く見えた。

えーっと…

起きたら食べてください。

それと、お金をおいておきますのでお昼はそれで買うように。

だって。

…ああ、横に置いてある封筒の事か。

どれどれ、少し中身を拝見する。

…。

…あの、これ…なんか間違えてませんか?



お昼に…、お昼に5万も使えと…!?

震える手で封筒を握り締めた。

というか、何故お昼のお金が急に?

今まではなかったっていうのに。

…思考を巡らせていると、クダリのにこにこ笑った顔が思い浮かんだ。

…あいつか。ノボリに余計な事言ったのは。















「くしゅんっ」


「?クダリ、風邪ですか」


「うーうん、そんなはずはないんだけどなあ…噂されてる?」


「はあ、風邪じゃないのなら手を動かして下さい、手を」


「ノボリの鬼畜!」


「鬼畜じゃありません」


「ノボリの鬼!」


「鬼じゃありません」


「ノボリの春菜馬鹿!」


「…クダリ、黙りなさい」


あれ、ちょっと効果あった?

けど睨んでくるだけなあたり、本気で怒ってない。

ノボリは最近、春菜っていう子供(15歳)をなんでか知らないけど気に入ってるみたい。

だから、春菜に何かすると怒られる。

最初は僕もノボリが怒るのが面白くてやってたんだけど、最近じゃあなんか変。

春菜が面白くて、つい足を運んじゃう。

馬鹿にすると真っ赤になる顔が可愛い。

僕が更に笑うと、春菜は怒ってうー、うー言いながら地団太を踏むんだ。

それが子供らしくて、っていうか子供なんだけど可愛くて。

多分癖なんだろうなー。


「ねえノボリ!僕、今日は春菜と寝たい!」


一緒に寝たりしたら、春菜は驚くに決まってる!

そしてまた、真っ赤になるんだ。

ああ、早くそれを見たいなあ、見たい見たい!


「駄目に決まっているでしょう。余計な口を叩いていないで作業を進めなさい」


怒られた。

ノボリ、いっつもそう言う。

春菜の事大切なのか分かんないけど、僕も春菜と遊びたいのに。


「ノボリずるいー」


「何がですか」


「春菜と一緒に暮らしてるから」


「…何故それだけでずるいと思うのです?」


「だって春菜面白い!」


にこにこしながら言うと、ノボリはため息をついた。

呆れたらため息をつくのはノボリの悪い癖!前そう言って叩かれた事があったなあ。

誰の所為だとお思いで?とか言われた時は本気で命の危険を感じたよ。

まあ、冷静に考えたら呆れたらため息吐くのって普通だよね!



「わたくしはあの様な子供に興味を持った事など一度もありません」


「うそだ!だってノボリ、ここ最近帰るの楽しそう!」


駅員さえ気付いてないけど、ノボリは少しだけ帰る時頬を緩ませるの僕、分かる。

それってきっと、家で春菜が待ってるから。


「そんな事は、」


「ある!」


「…クダリ、作業に戻りなさい」


「ノボリの鬼畜ー!」


「鬼畜じゃありません」



渋々作業に戻ると、自分の内ポケットにある5万円を見てにやりと笑った。

春菜、驚くだろうなあ。

ノボリが置いて行った10万円のうち5万円を僕がとっていったなんて知ったら。


鼻歌を歌いながら、作業を進めた。

















えーっと…、料理はまあまあ出来るし、簡単なのでいっか。

ご飯と、お味噌汁と、サラダと、肉じゃがと…天ぷらも作ってあげようかな。

連れてこられたんだけど自分的には助かってるのでどうせなら恩返しに色々なもの作ってあげたい。

子供じゃないんだ、って事、証明したい。

全く、ノボリは何時も私の事を子供子供って。

この前だって、お風呂に入る時ちょっとからかってやろうと思って覗かないでね、って言ったらノボリ、すました顔で。


子供の入浴を覗く趣味はありませんのでご心配なく。


とか言いやがった!

ノボリにだって悪い所はあると思う。

私は何も悪くない。…多分。



(ノボリの)家に帰って、早速夜食の準備をする。

そういえば、誰かと一緒に食べるのなんて久しぶりかも。

お父さんは夜遅くまで帰って来ない時もあれば朝に帰って来る日もあるし。

お兄ちゃんはバイトで疲れてご飯食べないで寝ちゃうし。

そう考えると、なんだかわくわくしてきた。

5万円でついでにエプロン(勿論安い奴)も買ったので気合は十分。

包丁をぎゅっと握りしめて、まずは肉じゃがから作ることに決めた。







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