BOOK
□好きです超好きです結婚して下さい
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一目惚れって、一体なんなのだろう。
一目見て好きになってしまいましたという軽率な恋の事?
いや別に悪い事ではないのだから、軽率とかしまいましたとかいう表現はおかしいのかもしれない。
あれ、まあいいや、それよりもだ。
一体どういったタイミングでそうだと気付くのだろう。
遅かれ早かれ、自覚してしまったのなら告白しなければならない。
ええ、そうです。私、好きな人が出来ました。
一目惚れなんてしたのはこの年(17歳)でありながら初めてだ。
幼い頃から自然の中でのびのびと育った身なので、好きな人なんて出来たのも初めて。
空を眺めながら足早にそんな事を考えていた。
ギアステーションに到着する。
今日もざわつきが耐えない様子だった。
ここにはバトルを目的とした人達が集まるバトルサブウェイである。
経験値やBPを稼ぐために来ている人達が殆どだが、その中でもやはり、あの黒白コンビに会いに来ている人は半分以上だろう。
しばらく辺りをうろうろしていると、お目当ての黒を見つけて呼びかけた。
「ノボリさん、ノボリさん」
「…貴方様は確か、」
ゆっくり振りかえって私を見るなり考える仕草。
今日もかっこいいなあノボリさん。
ああもう、なんでもいいから結婚してくれ。
「春菜様でしたか」
「はい!おはようございます」
「おはようございます。本日はどのトレインにご乗車なさるのですか?」
「ううん、今日は乗りません」
そう断言すると、ノボリさんは首を傾げた。
では、どんなご用件で?
「ノボリさん!」
「…わたくし、?」
「はい!」
「と、いう事は、私に直接バトルを申し込みに来られたのですか?」
「違いますよー、もう!」
私は少し困っているノボリさんに笑顔で言い放った。
「結婚して下さい」
…。
あれ、どうしたのノボリさん。
何時も以上に口角が下がってますぜ。
もしかして嬉しすぎてですか。そうですか、そうですよね。
「すみません、唐突過ぎて理解できません。仕事に戻らせて頂きます」
「えぇ!そんな!待って下さいよ」
「…まだ何か?」
「だから結婚して下さいって」
「ご冗談は顔だけにして下さいまし」
「顔だけって!?」
さらっと酷い事を言われた。まあ、毒舌には慣れてるさ。
だってノボリさんって無自覚に辛口だし。
がっくりと項垂れていると、ノボリさんは用事があるので失礼します、と言って私の前を通り抜けていく。
ハッとした時には遅かった。急いで振りかえったのだがノボリさんの姿は見えず。
ぐぬぬ…なんて足が速いんだ…。
今日も少ししか喋れなかった!
うぅ〜…名残惜しげにノボリさんが去って行った方を見詰める。
すると、後ろから革靴のカツカツという音が聞こえてきた。
一瞬ノボリさんと思ったが、これは違う。
第一、ノボリさんはたった今ここを離れたし。
…じゃあ、
「春菜ー!」
「ぐえ」
クダリだ。
思いっきり首掴まれたんですけど。
超苦しい。