BOOK(進撃)
□プロローグ
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所変わって此処は食堂。
会議も終わり、仕事も片づけ、早くも日が沈もうとしている頃だった。
食堂で今日の疲れを振りかえっていると、横にハンジさんが座ってきた。
後からエルヴィン団長とリヴァイ兵長もやってくる。
「ペートラー、一緒に飲もうよ!ほら、早くリヴァイも!」
「急かすなクソメガネ」
「では、私もたまには一緒させてもらおう」
…ええ!?ハンジさんとリヴァイ兵長ならともかく、何故エルヴィン団長が!?
普段ならあり得ない緊張感に包まれ、おちおち紅茶も飲めなかった。
「…そういえばさー、春菜頑張ってるよね」
ハンジさんがふと、口を開く。
私はそれに心当たりがあった。
「もしかして、先日のトロスト区奪還作戦で出た負傷者の看護の事ですか?」
「そうそう。昨日なんだけど、夜も寝ないでつきっきりで看護してるもんだからさ、言ってやったんだ。”そんなに頑張ってたら心配であの子達は眠れないよ”って」
「え…」
そう、だったのか。
じゃあ私は疲れてる春菜を無理やり叩き起こして…。
…少し、悪い事をしたな。
「春菜…、ものすごく仲間思いですもんね」
「…へ」
「…フフ」
何故かハンジさんが驚いたようなよく分からない顔をして私を見ている。
エルヴィン団長も、口元の笑いを抑えきれなかったような微笑を零していた。
流石リヴァイ兵長は、フン、と鼻で笑い珈琲を啜っているようだが。
「…あの女が仲間思いか。…生き残ってみるもんだな」
「え、兵長…?」
「アハハ!本当にね!なんだか嬉しく感じるよ」
「…あの…、どういう事ですか?」
周りの反応がおかしかったので聞いてみる。
…どうしてだろう。私は間違ったことは言っていない。
彼女は仲間思いだし、自分の命より仲間を助ける方が得意の様にも見える。
ハンジさんがぐぐっと顔を近寄らせてきた。
「春菜はね、あれでも昔はリヴァイの事と調査兵団、そしてエルヴィン団長の事を恨み、嫌悪していたんだ」
「ええ!?…し、信じられません」
「はは。私としては、今の春菜の方が信じ難いさ。…よくあそこまで、変わってくれたよ」
「前はもっと暗くて、面倒な性格してたしな」
兵長を見る。
蝋燭に照らされ、昔を思い出すかのような細められた瞳にドキッとした。
「でも…」
私は信じられない。
春菜が昔とはいえ、リヴァイ兵長とエルヴィン団長、それに調査兵団を嫌悪していたなんて。
今の彼女は明るい。それはもう、調査兵団の光と言えるくらいには。
…そんな光の様なあの人が…、暗かった?
…信じられるはずがない。
エルヴィン団長が珈琲のおかわりを全員分持ってきて着席した。
「あ…すいません、わざわざ」
「いただきまーす」
ハンジさん…。
団長はフッと笑い、構わないと言った。
そして蝋燭を真ん中に持ってきて、兵長を見てから目を伏せた。
「…少し、昔の話をしようか」