BOOK(進撃)
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告白したあの日から1週間。
何も進展はない。
…そりゃ、自分で動かなきゃ現状は変わらないんだけど。
…でも、だって。…、断られたら……怖い。
相変わらず自分の情けなさにため息がつく。
兵長だって忙しいんだ。私なんかに構ってる暇はなくて。
つい先日壁外調査があったばかりなのか、すぐに兵長を見たいと思ってしまう。
好き…なんだろうか。向こうは。
もしかして、私なんかどうでもよくって、あの日ただ疲れてたから兵長自身あまり意識がなくって…みたいな事ないよね?
再びため息が出る。
どうしてこう…もっとポジティブに、前向きに考える事ができないのだろう。
でもそれはしょうがないよね、と心の中で諦めもある。
だって生まれ持った性格だし、このネガティブ思考も、誰にだって敬語をつけてしまう癖も、兵士のくせに弱気な態度も全部私なんだから。
…けど、いくら弱気だって言っても、やっぱり何もしないっていうのは駄目だよね。
どうしよう。今から兵長の様子見に行こうか…?
でもお仕事中で邪魔だったら申し訳ないな…。
なんてぶつぶつ呟きながら廊下を歩いていると、ペトラが通りかかった。
「あ、春菜。丁度いい所に」
「…ペトラ?何か用ですか?」
「ちょっと、敬語止めてって言ってるよね?…で、この書類の事なんだけど、兵長に渡しておいてくれない?」
「え…、こ、この書類をですか!?」
「えっと…、なんか都合悪かった?だったら他の人に頼むけど…」
「い、いえ!!行きます!!ありがとうございます!」
「?…うん、じゃあお願いね」
「はい!」
…うぅ、これで口実が出来た。
兵長の様子をうかがう為の理由が。
私はじっとその書類を見詰めて、抱き締めた。
ありがとう、ペトラ!
私は兵長へ書類を届けるべく、廊下を走った。
ノックをして、静かに扉を開ける。
「失礼します…春菜です」
ドキドキしながら部屋の中を覗くと、兵長はお仕事をしていなかった。
ほっと安心したと同時に、胸がきゅんっと締めつけられる出来ごとが。
「…リヴァイ兵士長…?」
なんと、兵長がソファで寝ているのだ。
その寝方もかっこいい、と思う。
書類をデスクの上に置き、妄想ではない本物の兵長にそっと近付いて顔を覗きこんだ。
…あぁ、寝てる。よっぽど疲れたんだ…、お仕事で。
久しぶりに間近で兵長を見る事が出来て嬉しかった。
起こさない様に、と部屋を出ようと扉に手をかける。
「…春菜?」
…。
起こしてしまった。
「あ、えと、あのですね、ペトラに頼まれた書類を――」
「こっちに来い」
「え」
な、な、なな、なん!?
とりあえず逆らう事は出来ないので、命令通りソファの近くへ行く。
すると、いかにも疲れてそうな兵長が、座れ、と命令してきた。
私はおずおずと、ソファに身を沈めた。
わぁ…、なんか、結構…固い…かも。
こんなソファで寝てて、痛くないのかな…?
なんて変な事を考えていると次の瞬間、兵長の頭が私の膝に落ちてきた。
「えっ…!?」
「…疲れてるんだ。…少しくらい、休ませろ…」
「は、はい…!」
あ、あぁ…。
私が持ってきた書類の事かな…?
もしかして気付いてたの?私が書類を持ってきた事…。
…それにしても、…。
落ち着かない…!!
サラサラの兵長の髪が、私の太股に触れる。
綺麗な顔立ちは、少し隈が目立って疲労が目に見えていた。
…、人類を背負ってるんだもの。
これくらいの休息、いいよね…。
この心臓の音が、兵長に聞こえてないといいけど…。