BOOK(進撃)

□四歩
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はあ…、昨日は一体どういう風邪の吹き回しだったのだろうか。

リヴァイ兵長が私に毛布をかけてくれるなんて。

しかも草むらで寝てた私に。

返そうにも、兵長の真意が分からないまま返すのはなんだかなぁ…の状態。

…もしかして本当にただの優しさ?

…怖い。なんか怖かった、それは。



はーあ、どうしようかなあ…。


なんて考えながら廊下を歩いていると、誰かにぶつかった。



「っだ!!……うぅ…ずびばせん…大丈…」


ぶ。




…へ、兵長だ。




私は条件反射で土下座する。

この人からは逃げられないと知っているから。



「すいません!!前方不注意の私に非があります!!兵長は何も悪くありませんですのでどうかお命だけは…!!」


恐怖でぺらぺらと口が回る。

しかし私がこんなにも恐れ、震えているというのに、兵長は私とぶつかった部分を払うとため息をついた。

あ。やっぱり払うんですか。


「いちいちぶつかったくらいで土下座すんじゃねぇ。俺の趣味を疑われるだろうが」


そのお言葉に顔をバっと上げる。

…!?

怒ってない…の!?


…いや、おかしい…!


いつもならぶつかった時、私が普通に「すいません!」と平謝りすると、兵長はガシッと私の頭を掴み、「掃除だ。来い」とかだもん!

だから今日は土下座してみたんだけど…。

効果あったのか、っていうと微妙だし…。

…はっ、まさか!



…熱でも…あるのだろうか…!?

仕事のしすぎで熱…!?



もしくは、妄想が過ぎるけれど、兵長との恋人ときゃっきゃうふふしすぎて私なんかどうでもよくなったとか!?


…いや、後者の方に確信はないが。



とりあえず、熱でもあったら(私の仕事量が増える事について)大変だ。



「…兵長…、調子悪いんですか…!?」



「…は?」


口を少しだけ開け、訝しげそうに私を見る兵長。

…うん、そうだ。熱だ。だっていつもより隈が大きい気がするし。

恋人とはきっと、忙しいから会えてないんだね。ああ、二人とも可哀そうに。


「だって…いつもぶつかった時、すごい顔で私の事睨むじゃないですか。…いつも不機嫌な顔が更に不機嫌になったり…。何かあったんですか!?」


…あれ。

本当に、どうしてしまったのだろう。

固まってしまった。

恐る恐る顔を覗きこんでみようとすると、スッと兵長の腕が上にのびた。


「?」


頭に疑問符を浮かばせながら見る。

すると、その拳が驚くべき速さで私の頭に直撃した。


「へぶっ!!」


いっ…てぇぇ!!

頭を抑えて廊下を転げまわる。

…あ。涙が。


兵長は転げている私を足で踏んで止まらすと、無表情で上から見下した。



「…そういえば先日は、お前が美味い茶を淹れてくれたんだったな」


「…あ、あはは…お、お口にあったんなら…そりゃあ幸いで…!!」


苦笑いしながら上を見上げる。

…う、美味い茶ってもしかしてあれだろうか。

茶が見えなくなるほど砂糖を淹れこんだあの激甘珈琲の事だろうか。


「今度は俺がお前に、とびっきり美味い茶を飲ませてやるよ」


「…へ…!?」



あ。

死亡フラグなう。

これは逃げよう。

うんそうだそうしよう。

少しの油断もない兵長の踏みつけをなんとか抜け、私の俊足で逃げる、逃げる、逃げる!

…ようとする前に、


腕を掴まれました。



「俺の命令が聞けねぇのか?あぁ?」

「ひっ…ききますききます!兵長様ぁあ!!」






こうして私は。


兵長の部屋で。


砂糖が約20個くらい入った紅茶(しかもクソ熱い)を飲み干すまで帰れませんでした。













そうして二人はすれ違う4歩!


(兵長…無理です。もう飲めません)

(ほう。俺の淹れた茶が飲めねぇのか)

(はい。…ってか、砂糖カップからこぼれてますけど)

(飲め)

(そんな睨んだって飲みませんよ!これは致死量だ!!)

(飲め)

(ちょ、話聞いてます!?無理って、)

(飲めと言っているだろうが)

(ぎゃああ!!口に流し込まないで!!………!!うっぷ、甘すぎて吐きそうです…)

(そうか。壁の外で吐けよ)

(巨人に食われろと!?)

(てめぇの実力なら造作もねぇだろ)

(そうかもしれませんが立体機動装置と剣なかったらその行為は自殺ですよ!!)

(お前自殺したいのか?)

(違う!!…ああもう、兵長の馬鹿!!ぐれてやる!!)





…。しょうがねぇから、次の茶は普通のにしといてやるか。

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