BOOK(進撃)

□二歩
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ついにこの日がやってきた…!

この、リヴァイ兵長をぎゃふんと言わせてやる計画が…!







何故私がこんなにもリヴァイ兵長を恐れ、悪戯を繰り返すのか。


事の始まりは1年前へと遡る。




私は調査兵団へ入団したて。リヴァイ班へと入った。

巨人への憎しみで戦っていたのは確かだが、表向きはひょうきんな、それでいて少し悪戯が好きな至って普通の女子だった。(何故かペトラにはそれ普通って言わないよと言われた)

ある日の事。リヴァイ兵長の事を全くもって知らない私は、エルヴィン団長に忙しいので書類を渡して欲しいと頼まれた。

どうやらリヴァイ兵長に壁外調査の報告書を作成して欲しいとの事だった。


私は特段用事があった訳でもなかったので、というかエルヴィン団長の用件など断れる訳もなかったので届けにいった、それがまさか、あんな火種を生むなんて。



丁寧にノックをして部屋に入る。もちろん、失礼しますという添えの言葉も忘れずに。


「リヴァイ兵士長。エルヴィン団長から報告書の作成をと」

「分かった。そこに置いておけ」

「では、失礼しま、」

「…待て」


んん?

何故かは知らないが、私はリヴァイ兵長に真直ぐ睨まれ(普通に見てるだけなのかな…)ていた。

扉を半開きにしたまま、じんわりと手のひらに汗が滲む。

はわわ、私何かしたっけ。ううん何もしてない。ただ書類渡しただけ――


「…雑巾を持ってこい」


「…は、い?」


慌てて、い、を付けたした。

は?なんていっただけで蹴りをくらいそうだったからだ。

ぽかんと口をあけて唖然としている私を再度睨み、(あ、やっぱ睨んでる)もう一度言った。


「てめぇの耳は飾りか?雑巾を持って来いと」

「はい今すぐお持ちいたします!!」


私の頭に怒りマークが浮かぶ。

リヴァイ兵長の言葉を途中で遮り、マッハのスピードで雑巾を持ってきてやった。

てかなんなのその罵倒!いる?いらないよね!?


「……持ってきましたけど?」

「…言い方を正せ」

「お持ちさせて頂きましたリヴァイ兵士長殿さま!」


「殿は余計だ馬鹿。…てめぇの足元を拭け」


え、じゃあさまは居るってこと。
リヴァイ兵士長さまって呼べってこと。

…ていうか今この人なんて言った?

私の足元を拭け?

え、なんで?意味分からないんですが。

雑巾と床に交互に視線を移し、それからまた首を傾げてリヴァイ兵長を見詰める。

そしたら兵長なんて言ったと思う?


優雅に珈琲啜りながら、落ち着いた無表情で、



”お前の靴で床が汚れただろうが。ちゃんと拭いて出てけ”








「あぁん拭けだぁ!?しかもその後も珈琲淹れてこいだの不味い捨ててこいだの…私はお前の召使じゃねぇっつーの!」


あの後反論したが、クリップが飛んできて頭に刺さったので仕方なく雑巾で床拭きましたよ。

…惨め。自分で踏んだ床を、その後雑巾で拭きまわる私惨め。



ただ、その時から私のリヴァイ兵長への反逆心は高まり、日に日に少しずつ悪戯をしていく内、悪化したという訳だ。

今はもう恐れる事なく悪戯に取りかかっていますよ。

え、人類の未来?…大事ですよ。悪戯と食事の次に。



さて、ターゲットは何処に行ったものか。


、居た!窓越しにターゲット発見。

書類を見ながら廊下を歩いている。

これは絶好のチャンスだ!

今回の私の作戦は、潔癖症のリヴァイ兵長の服に、卵をぶつけてみようという作戦だ。

シンプル且つスッキリ。なんて天才なの、私!

よし、あと5m進んだら…。

あと1m…。



…今だ!


「いだっ!え、何?誰!?」

なんか、打つ瞬間に頭を叩かれてしまった。

「何やってんだ、こんな所で!書類作りはどうしたんだよ!」

「オ…オルオ!それにペトラも!?」

「あなた分隊長でしょ?…え、もしかしてまたリヴァイ兵長に悪戯しようとしてたの?」

「そうだよ!なんで邪魔すんだよもう!……ってあああ!卵が潰れて…キャーー!靴の裏にべったり!!」


しまった。背中叩かれた衝撃で思わず下に打っちゃったのか。

「なにすんだよオルオの馬鹿!私の作戦が…あぁあ…」

リヴァイ兵長はもうとっくに居ない。通りすぎたのかな…。


「…ねぇ、春菜…本当にそろそろ学習能力つけたら?リヴァイ兵長に殺されるよ」

「殺されないよ!…それにペトラ…その口のきき方はなんだー!私は分隊長だぞコラー!」

「じゃあ分隊長、卵片づけてね」


ハッ。卵…。忘れてた。

…なんかぬめぬめした不快感より、早々にこの場を綺麗にするか立ち去るかしないと嫌な予感が…。

するよりも先に、ペトラに文句を言い返す。


「う、うるさい!私の作戦の邪魔して!大体…大体私は分隊長だぞ!」


「ほう。分隊長とやらは、部下に説教する際床を卵で汚してからするのか…」


「違いますよ、これはリヴァイ兵長にぶつける為の卵であって、説教なんかしてませ――」



そこまで喋ってはた、と止まる。

…自分は今、誰と会話していた。


背後から物凄く禍々しいオーラを感じる。

振り返りたくない。見たくない。

私の体はカタカタと震えだし、全身の毛穴から汗がどっと吹き出す。

目の前に居るペトラ・オルオは、二人してサッと顔を伏せていた。

…酷い。


「…こっちを向け」

「ち、ちちち違います!!これは兵長に美味しい卵料理を作ってあげようという大変部下にしては褒められる心意気でですね…!!」

「春菜」


再度名前を呼ばれる。

あ、蹴りくる。やべぇ。逃げなきゃ。

これまでの経験が言っている。逃げるが勝ち、と。

…だが、そんなのが通用するのは精々並みの隊長だけだ。

この人には逃げる=俺を舐めているという大変暴君な思考を持ち合わせていまして。

私はくるりと振り向き、頭に床を擦り付けた。

見事なまでの土下座である。



「すいませんでしたぁああああ!!!!神さま兵長さまぁぁあ!!雑用・掃除などなんでも押しつけて下さいですからどうかお命だけはぁあああ!!」


瞬間。そっと頭を撫でられた。

…え?兵長まさか許してくれるん…ぶはああ!!

撫でられたかと思われた頭を引っ張られ、鳩尾に蹴りがクリーンヒット。

オルオ達にさっと避けられ、卵が背中にもべちょり。

おえ…おえぇ…、今朝食べたパンの風味が胃の中から…。


「後で俺の部屋へ来い。…分かったなグズ」


ものすごい上から睨みつけられ、涙目の私は呼吸困難(蹴られたので)に陥りながらも、…はいと返事をするしかなかった。



…その後、兵長の部屋で、分隊長にも関わらず一日中部屋の掃除やら珈琲やらの雑用としてこき使われたのは言うまでもない。






三歩後退の二歩





(あの春菜分隊長…って、なんで泣いてるんですか?…え?リヴァイ兵士長が…?え、恐い…?…えぇ!?死にたい!?)

(アルミン、絶対に今の春菜に抱きつかれないようにね)

(え、どうしてですか…?ペトラさん…)

(…怖い人が、居るから)

(???あっ、春菜分隊長…ッ!?………………抱きつかれました)

(…アルミン、今までありがとう)

(なんですか急に!!)





兵長もいじわるしてないで素直に言って欲しいわ。……ただ好きなだけ、って。

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