僕らのVestsweetvv

□自覚した夜
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あの後、私とポッドは2時間ほど寝ていたらしい。
最初に起きたのは私で、ポッドに抱き締められた形で寝ていたのに驚いた。
腕時計を見ればもう4時で。急いでポッドを起こしてレストランに戻ろうとする。
ポッドは寝ぼけ眼を擦りながら

「んー…まだ大丈夫だろー…」

と寒そうにしている。普段の疲労等が積もっている為寝足りないのだろう。
私だって同じだ。だけど、そんな事を言っている場合ではなかった。

「全然大丈夫じゃないよ!早くしないとデントさん怒っちゃう!」

「…アイツは怒んねぇって。それとも何だよ、デントに会てぇのか?」

「ち、ちがう!」

にぃ、と口角を上げるポッドを、私は殴り飛ばした。
いてぇ…と頬を抑えているポッドを睨む。

「デントさんは本当にそういうんじゃないの」

「…へいへい」


納得いかない様子だったが、無視してレストランに戻った。





ガチャ

「…ようやく帰ってきましたか」

皆片づけをしているようだった。
ベルは皿を割る可能性があるので机を拭き、チェレンは皿を運び、コーンとデントは洗っている。
そして戻ってきた私達を見てコーンはふぅ、とため息をついた。

「ごめんね…つい、寝ちゃって」

「…眠ぃ」

「あれだけ寝ててまだ寝足りないのですか、ポッドは」

呆れながらも動かす手は止めない。流石、と思う。

「だってよー、疲れてんだもん」

「このコーンだって同じですよ。全く…探しに行かなかった事、感謝して下さいね」

「?なんでだ?」

コーンの考慮が分からなかったようで、ポッドは首をかしげていた。
…馬鹿。流石のコーンも悪態をついてそれ以上はなにも言わなかった。

「…デントさーん」

「…はい」

「手伝いましょうか?」

「…いいですよ」

私が皿洗いをしているデントさんの横に行き、顔を覗き込む。
…うん、無表情だ。
ポッドはやはりまだ寝ていたいのか机に突っ伏してしまった。

「そんな事言わずに。私だけ何もしてないなんて悪いですよ」

「本当にいいですって。そこらへんで大人しくしてくれればもうすごく助かります」

「ある意味酷いですよねー、それ」

は言ったものの、やはりじっとしている事にした。
…あのベルでさえ働いているのだから何かしなくちゃと思うのだけれど…。
デントさんは目を合わせてくれず、コーンは忙しそうに。
チェレンはポッドに毛布掛けてるし…。


…んー、することがないなぁ。

「デント様ー」

「何回も何回もなんですか?」

やっぱりスルーなんだね、様付け。

「なんでちょっと素っ気ないんですか」

「別に、普通ですけど」

「だって、目、あわせてくれないじゃないですか」

未だじっとデントを見詰めるが、彼は一向にこちらを向いてくれない。

「…今は食器洗っているので」

「じゃあ手伝いますから」

「結構です」

「なんでですか!」

「君が食器を洗うと何故か食器が5枚以上無駄になるからですよ!」

最初、知らなくてどれだけ困ったか。
皿が足りないな、と思って聞いてみれば、「あは、割っちゃいました」なんて。
馬鹿げてる。普通報告するだろう。

「少なくなった方ですよ!最初は7だったんですから!!」

「何偉そうに言ってるんですか!!っていうかマジですか!?」

「マジです!」

「自信満々に言わないでください。いらつきます」

「えへへ、それ程でも」

「あれが褒め言葉に聞こえるなら脳内外科に行くことをお勧めします。そしてそのまま帰ってこないでください絶対に」

「そんなー、照れなくてもいいんですよぅ」

「ホント頭大丈夫ですか。その中に何が入ってるんですか。君の脳は役立たずなんですか」

悪態をつきながら、デントは食器洗いを終わらせた。

「わー、終わりましたねぇ」

「そうですねぇ、貴方の人生も終わればいいのに」

「あはは、冗談きついですよ」

「だって冗談じゃないですからね」

「ふふ、デントさんって本当面白い人ですね」

「あはは、君は本当に人をイラつかせる天才ですね」

「そんな褒めないでください。照れます」

「安心して下さい。褒めてません。そしてなんであの言葉が褒め言葉に聞こえるのか深い謎です」

そんなやりとりを見てコーンは内心ため息をついた。
お互い素直じゃないなぁ、と。
やはり、気持ちに気付いていたのだ。
春菜とデントの。

「言葉のキャッチボールって知ってます?」

「やーだなぁ、デントさんってば。言葉でどうやってキャッチボールするんですか」

「知らないんですね。そして出来ないんですね」

「あれ?デントさん…なんかヤナップがいませんけど…もしかして嫌われたんですか?逃げられたんですか?」

「本当に話し聞きませんよねー、君」

「お褒めにあずかり光栄です」

「いえいえ。君の頭の方がめでたいですから」

「そりゃあ私とデントさんじゃあ賢さの次元が違いますからね」

「そうですね。君が下で僕が上ですけどね」

「んー、それを180度回転してくれたらいいのに」

「何か言いました?」

「何か聞こえました?」

「…ちっ」

「あー、デントさんが舌うちした。駄目ですよ、爽やかキャラはちゃんと保ってないと」

「キャラが定まっていない君に言われたくないですね」

「失礼な変態ソムリエですねぇ」

「変態?天才の間違いじゃないですか」

「おかしいなぁ、デントさんの何処が天才なのかさっぱり見当もつきませんけど」

「ホント何使ってるんですか?魔法で僕のイラつき度上げてるんですか?」

二人はぎゃーぎゃー口論しあいながら椅子に座る。


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