BOOK

□た
1ページ/1ページ











わたしが家に帰るか帰らないかという相談をノボリにしてみた所、ノボリは好きなようにしていい、とのことだった。

だったら、このまま気の済むまでここに住んじゃおうかな。

もちろん、いくらノボリとはいえ家主の言う事くらいは聞くけど。

親にはライブキャスターで友達の家に泊まる、と連絡したし、服は友達に持ってきてもらったし。

あ、もちろんノボリの家に、じゃなくて、別の場所に待ち合わせをして、だけど。






そしてまた、何時ものように朝、起きてみるとノボリは居なかった。

まだ慣れないベッドから地面に足をつき、はだしでぺたぺたとリビングに向かう。

朝の楽しみはこの朝食以外にないのだから。


リビングへと繋がる扉を大きく開く。



今日の朝ご飯はなんだろう?

ノボリって悔しいけど(デジャヴ?)料理超美味しいからなあ。



「あ、おはよー」


「…」


クダリが、恐らくは私の朝ご飯であるハムチーズのサンドイッチを食べていた。

え、何この人。朝っぱらから私に喧嘩売ってんの?

この人は、ノボリが居ない時間を見計らってやってくる。

初日をいれて今日で3回目。まあ、退屈するよりかはいいけど。

だからノボリは、クダリが朝此処へやってくることを知らないのだ。

まあ言う義務も義理もないけど。


「ごちそーさまでした」


何その満腹そうな顔。…まあ、別に朝ご飯くらいいいけどさ。

お昼は何も食べてない訳だし。


「え、春菜お昼食べてないの?」


「うん、そうだけど、全然お腹空かない…って、クダリ?」


「ちょっと待ってて!」


クダリは急に立ち上がると、台所に立った。

包丁の音とか見ると、調理をしているのかな。


「…だからそんなに細いんだ」


ぼそり、と作業している自分の手元を見ながら呟いたクダリの声。

えぇ、いやいや、贅肉乗りまくりだけど。

まあ褒められて嬉しくない訳がないので、素直に喜んでおきながら、クダリの隣でじっと調理する様を見ていた。

まさか、また食べるつもり?

いやいや、どんだけ爆食なんですか。


10分後。美味しそうなオムライスが出来ていた。

ちゃんと旗も立っている。…お茶目というか、可愛らしいというか。



「はい、春菜にあげる!」


「…へ?」


まさか、私にくれるとは微塵も思って居なかった。


「…クダリ?」


「早く食べて。冷める!」


私は首を傾げながら受け取り、席について食べ始めた。

それを眺めるクダリ。

…見詰められると食べにくいんだけどなあ。

きっとそんな事を言っても止めてはくれなさそうなので、我慢することにした。



「ねえ、春菜、ギアステーションに来れば?」


「は?」


唐突な提案に、目を白黒させるばかり。

一体何を言い出すんだ、コイツは。

…とは思ったものの、面白そうだと純粋に思った。

そのギアステーションとか言う所で、二人は働いてるんだもんね。


「…行ってみたい、かも…」


「だよね、じゃあ行こ!」


「ちょっ」



腕を無理やり掴まれて、家を飛び出す。


…最近分かった事だけど、クダリってかなり強引。





.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ