BOOK
□た
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わたしが家に帰るか帰らないかという相談をノボリにしてみた所、ノボリは好きなようにしていい、とのことだった。
だったら、このまま気の済むまでここに住んじゃおうかな。
もちろん、いくらノボリとはいえ家主の言う事くらいは聞くけど。
親にはライブキャスターで友達の家に泊まる、と連絡したし、服は友達に持ってきてもらったし。
あ、もちろんノボリの家に、じゃなくて、別の場所に待ち合わせをして、だけど。
そしてまた、何時ものように朝、起きてみるとノボリは居なかった。
まだ慣れないベッドから地面に足をつき、はだしでぺたぺたとリビングに向かう。
朝の楽しみはこの朝食以外にないのだから。
リビングへと繋がる扉を大きく開く。
今日の朝ご飯はなんだろう?
ノボリって悔しいけど(デジャヴ?)料理超美味しいからなあ。
「あ、おはよー」
「…」
クダリが、恐らくは私の朝ご飯であるハムチーズのサンドイッチを食べていた。
え、何この人。朝っぱらから私に喧嘩売ってんの?
この人は、ノボリが居ない時間を見計らってやってくる。
初日をいれて今日で3回目。まあ、退屈するよりかはいいけど。
だからノボリは、クダリが朝此処へやってくることを知らないのだ。
まあ言う義務も義理もないけど。
「ごちそーさまでした」
何その満腹そうな顔。…まあ、別に朝ご飯くらいいいけどさ。
お昼は何も食べてない訳だし。
「え、春菜お昼食べてないの?」
「うん、そうだけど、全然お腹空かない…って、クダリ?」
「ちょっと待ってて!」
クダリは急に立ち上がると、台所に立った。
包丁の音とか見ると、調理をしているのかな。
「…だからそんなに細いんだ」
ぼそり、と作業している自分の手元を見ながら呟いたクダリの声。
えぇ、いやいや、贅肉乗りまくりだけど。
まあ褒められて嬉しくない訳がないので、素直に喜んでおきながら、クダリの隣でじっと調理する様を見ていた。
まさか、また食べるつもり?
いやいや、どんだけ爆食なんですか。
10分後。美味しそうなオムライスが出来ていた。
ちゃんと旗も立っている。…お茶目というか、可愛らしいというか。
「はい、春菜にあげる!」
「…へ?」
まさか、私にくれるとは微塵も思って居なかった。
「…クダリ?」
「早く食べて。冷める!」
私は首を傾げながら受け取り、席について食べ始めた。
それを眺めるクダリ。
…見詰められると食べにくいんだけどなあ。
きっとそんな事を言っても止めてはくれなさそうなので、我慢することにした。
「ねえ、春菜、ギアステーションに来れば?」
「は?」
唐突な提案に、目を白黒させるばかり。
一体何を言い出すんだ、コイツは。
…とは思ったものの、面白そうだと純粋に思った。
そのギアステーションとか言う所で、二人は働いてるんだもんね。
「…行ってみたい、かも…」
「だよね、じゃあ行こ!」
「ちょっ」
腕を無理やり掴まれて、家を飛び出す。
…最近分かった事だけど、クダリってかなり強引。
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