BOOK(進撃)

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「リヴァイ兵士長、書類です」


付き合い始めてから1カ月。

大分この人の隣に居るのも慣れてきた。

…だけど、いざ目を合わると心臓がパンクしそうな程跳ねあがるのだけは慣れない。

だって、兵長がかっこよすぎるんだもの。


「ああ。…ていうかおい、春菜」


「?、なんですか?」


「何故そんな長ったらしい名前で呼ぶ」



苦虫を噛み潰したようなそんな顔をされた。

もしかして、兵長の名前の事だろうか。

どうしてと言われても…これが私の癖なのだからしょうがないんだけどなぁ…。



「…えと…癖、なんです…」


「面倒くせぇからリヴァイでいい」


「ええ!!だ、駄目です!絶対!」


「なんでだよ」


「え、あの、じゃあ…兵長!兵長って呼びますから!」


「だから俺は」


「無理です駄目です!」





サッと書類を差し出す。

…リヴァイ、なんて呼び捨てで呼べる訳がない。

もし呼んだとしても慣れる日が来るとは思えないのが怖いところだ…。

これが根っから刻まれた上下関係というものか…。





兵長はじっと私を見ていたが渋々了解したように書類を奪い取った。


「…あ、では私はこれで…」


「あ?俺は行っていいなんて一言も言ってねぇぞ」


「…、はい…」



あの膝枕の件から、私はよく兵長にソファに座らされてから膝枕を迫られる。

もちろん断ることなんてないし、寧ろ私は嬉しい。

普段見る事が出来なかった兵長を知れて、なんだか優越感に浸れるから。

それに、ああして疲れている時以外も膝枕をするってことは、きっと兵長は私に…。


(甘えてる…んだと、思う)


そう思うとすごくすごくきゅんとなる、

何時もはあんなに無表情で淡々と仕事をこなしていると言うのに。



それと同時に、兵長は私が書類を届けて帰ろうとする度に引きとめる。

…ううん。理由をよく分からないけど、なんだろう。

もしかして兵長って、誰かが居る方が集中出来るのかな。

…いや、そんな事ないよね。今までだって効率よく書類を処理してたもの。



私は恐る恐る、少し固いソファに腰掛ける。

…うーん。

なんでこんな固いソファで寝てるんだろ。

柔らかい方が座り心地とか寝心地とかいいにきまってるのに。

…もしかして、忙しすぎて時間がなく、今まで変えれなかったとかかな?

だったら私、今暇だしそれくらいの事はしたい…!


兵長の、役に立ちたい…!



「あの、兵長…」

「なんだ、構って欲しいのか?」

「違います!」


いや、構って欲しいんだけどね。

…ていうか兵長、構って欲しいのか、とか聞きながら私の方一切見てないし…。

書類をずーっと見てるし…。

…私ってやっぱり、魅力がないのかな。

…って、今はそんな事言ってる場合じゃない!



「兵長、どうしてこんな固いソファ置いてるんですか?」

「…寝にくいから」



ぽつりと聞こえた声。

それに驚いて兵長を見る。

兵長は私の視線に気付いて、書類から目を離した。


二人の視線が重なる。

兵長は場馴れしているのか、じっとこちらを見て逃がさない。

私は全く耐性がないので、顔を真っ赤にしてうろたえるばかり。






「…あ、うぅ…」


ついに恥ずかしくて、目を離してしまった。

…うう、兵長はかっこよすぎる。




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