僕らのVestsweetvv

□The past
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「…何しに来たのかな?」


トウヤは不気味に微笑んだまま。
二人が睨んでいるのをものともしていない、余裕があるように見えた。
それがデントとベルをより緊張させていた。


「…春菜を、取り戻しに来た!」

「…取り戻しに、ねぇ…」

「そうよ!あんたなんかに…春菜は奪わせない!」

不思議な部屋だった。
ミステリアスで、薄暗い。
そのせいで、周りがよく見えない。
トウヤが座っているベッドも、奥は見えにくい。

「…さっきから春菜を取り戻しにきたやら奪わせないやら言ってるけど…何様なのかな?」


「え?」


「春菜は君たちのものじゃない。君たちの所へ行くか僕の所へ来るか、決めるのは春菜だろう?」


「っ、それは、そうだけど…!」


「僕たちが決める事じゃないんだよ。分かるかい?」


えらく余裕を持っているな。
何故だ?彼女は此処へ来るのを嫌がっていた。
だったら…僕たちの所へ来るのは当然なのに。
…何故?
何処からあんな余裕が?


「じゃあ春菜に選ばせろとでも?えらく可笑しな自信がある人ね!春菜を連れて来なさいよ、此処へ!」


「…」


トウヤはぱちん、と指を鳴らす。
すると、トウヤが座っているベッドの奥からスッと人が起きあがった。




「……?…な、なんなの…?」


「……ッ!!あ、れは…!」




「…春菜、君の友達が呼んでいるよ?」


静かに立ちあがったその姿は、見間違うはずもない、僕たちが探し求めた春菜だった。
丈が短いゴスロリメイド服。髪の毛は二つに結んで巻いてある。
その、…、可愛い…。
直視できない。


「友達?誰のですか?」



「春菜!?…何を、言ってるんだ…!」



顔が…、違う。
あれは、春菜じゃない。
あんな冷酷で冷徹で非情な表情、見た事がない。
…本当に春菜なのか…?



「…春菜…!あたしだよっ、ベルだよ…!」


ほら、と自分を指差しながら訴えるベル。
疲れているのだろう、相当必死だった。

しかし、ベルを他人と同じような目で見ると


「…誰ですか?」


そう言った。


「なっ…、何言ってるの…?」


「…トウヤさん?」


「ああ、ごめんね春菜。…そこの二人が君の事を取り戻しにきたって言っているんだけど…」


「…」


「…さて、色々な事があって混乱してるだろうから、僕が説明しよう」


トウヤがベッドから立ち上がった。
二人は警戒する。


「君たちは、永遠の螺旋階段を登っていたはずだ」


「!」


「何故終わりが見えない?何故頂上まで辿り着かない?…そう思っていただろう?」


「…」


「あれはね、ルナの力なんだよ。ルナのね…。あの子は可愛い。色々な力で僕を驚かしてくれたからね」


「ルナ?」


「そうだよ。…だけど、それがとけてしまったって事は…ルナが負けたんだね」


「ルナって…誰なの?」


トウヤは目を細めたあと、じっとデントを見詰めた。
はてなマークを頭に浮かべ、見詰められた本人は訝しげそうに顔をしかめた。


「…確か、ポッドくん?だっけな…。その子と戦っていたようだけれど…、勝敗はみっともない程にぼろ負けしたようだ」


「ポッドが…勝った?」


よかった、ほっと安心した所だがまだ緊張は抜けない。



「あの子はもう使い物にならないだろうな。…あぁ、説明だったね。君たちがのぼっていた階段、あれは幻術だよ。幻」


「…やっぱり」


「ルナが作った…ね。…ルナは不思議な力が使えるんだ。つまり過度な超能力がね…」


「な、なんだって…」


「ルナの力で幻術を魅せていたのだけど…、ルナの心が折れてしまったので幻術がとけたんだな、きっと」


「…成程、そういうことか」


「そんなのはいいから、早く春菜を返しなさい!」


ベルが叫ぶ。
トウヤは嘆息して春菜に目をやると、意味深に微笑んだ。


「…しょうがないなあ。お相手してあげて、春菜」


「はい」


「!?」


「あ、重要な説明がまだだったね。春菜は君たちの事なんて知らない。僕のラルトスで催眠術をかけたからねえ!あははっ!」


…催眠術?
…なんて事を!
じゃあ春菜は、トウヤさんに従うしかないっていうのか。
そうか、だからさっき僕たちのことを覚えていないって…。

…っ、折角、助けに来たのに!


「さあ?僕の春菜とバトルするのは誰?」


「…っ、」


誰が君の春菜だ…。

…、よし、バトルは…

此処は…、僕が!


「僕が相手をするよ!」




春菜を…止める為に!




「…シママ」






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