PEACE MAKER短編

□輪廻再会
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小さい頃から、よく見る夢がある。それはまるで昔の、侍のいる時代で俺は新撰組の1人。友達(ダチ)を助けられずにずっと後悔して泣き喚(わめ)いている夢。そして、俺と2人の友達と一緒に馬鹿なことをやってはしゃいでいる楽しい夢の2つだ。


俺の名前は、永倉新八。今は普通に大学3年生として普通の生活を送っている。ただ、人と少しだけ違うところと言えば、前世の記憶があるということか。どうやら、夢からも、そして自分の名前からも察せられる通り、俺の前世は新撰組の二番隊隊長・永倉新八であったようだ。毎回毎回夢に出てくる奴の1人だって今俺の席の隣に座っている。俺よりも滅茶苦茶デカくて体格の良い原田左之助。こいつもきっと名前から察すれば分かるだろうが、新撰組の十番隊長の原田左之助の生まれ変わりなのだろうなのだろうと思う。いや、きっとそうだ。後のもう1人は出会ったことは1度もない。ただ。俺と左之助と、もう1人がいることは確かで…。


「…っつぁん……新八っつぁん!」


俺の名前を呼ぶ声に思わずはっとなって自分の隣に座っている奴の顔を見た。すると、左之が物凄く俺に顔を近付けてきていた。俺は僅かに間隔を開けるために座ったまま上半身だけを後退させていた。左之は眉を片方吊り上げ、片目を眇めて俺に詰め寄ってきた。


「新八っつぁん、俺の話聞いてたか?」


話って、何だったっけ?
やばい、完全に別世界に飛んでしまっていた。
俺は目を泳がせて何と言おうかと策を練っていた。いや、策と言えるほど大層なものではないのだけれど……。必死に目を泳がせていた時だった。足に何かがこつんとぶつかってきた。自分の足に目を落とせば、何処かから転がってきたのだろう。誰かのボールペンが俺の足に当たり、ころころと揺れていた。ボールペンを拾って顔を上げようとしたのと、どうやらこれを落としたらしい奴が声を掛けて来たのはほぼ同時だった。


俺は顔を上げたまま呆然とした。何故なら俺の目の前にいる奴の姿はよく知っている奴だったからだ。そいつはにこにこ、というか苦笑に近い笑顔を浮かべていた。


「ごめんごめん、ちょっと手を滑らせちゃって落としたんだ。拾ってくれてありがとう」


何となく軽い感じのそいつの名前を、俺は知っていた。初対面のはずなのに、ちゃんと覚えている。こいつも夢に出てきた1人だ。そして助けられなかった友達。
俺は、無意識にそいつの名前を呟いていた。


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