PEACE MAKER短編
□この先もずっと!
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屯所中に忙しない足音が響き渡った。
それは、一つの部屋の障子の前で止まる。
土方歳三の小姓である市村鉄之助は大きく息を吸い込み、叫んだ。
「ススムッ!いるか〜!?」
返事はない。鉄之助は部屋の前で腕組みをして首を傾げた。
「副長のところにでも行ってんのかな?」
そう言いながらそっと障子を開けてみると、監察・山崎烝の背中が目に入った。
「何だよ、居るなら返事くらいしろよ」
文句を言う鉄之助に山崎は振り向きざまに鉄之助の顔を呆れた様子で見つめた。
「そんな大声出さんでも聞こえとるわ、阿呆」
その言葉にムッとした鉄之助だったが、それは山崎の言葉で治まった。
「それで、俺に何の用や?」
尋ねられて、鉄之助はムッとした様子からいつもの元気で明るいものへと戻った。
「あ、そうだった。ススムお前昼飯食ったか?」
「いや、まだやけど?」
「だったらさあ、今から町(そと)に飯食いに行かねえか?」
にっこりと人懐っこい笑顔で言ったが、山崎は目を半眼にして鉄之助を見やった。
「何で俺がお前と飯食いに行かなあかんのや」
「何でって、たまにはいいじゃんかよ〜ススム〜」
駄々っ子のようにそう言うと、鉄之助は山崎の背中におぶさった。
「全く、何やねん。まるで言うこと聞かん餓鬼のように……その歳でこんなことするから背ぇも伸びんのや。市村」
「それとこれとは別の話だろっ!それに……」
「それに、何や?何が言いたい」
山崎が話を促すと、鉄之助は廊下をちらと見て、山崎の背におぶさったままにい、と笑った。
「それに、俺だけじゃなくてもう一人いるんだよなあ」
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