NT

□貴方の傀儡に
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きっと好きだったのは私だけ

きっと胸が熱くなるのも私だけ




貴方は私の憧れだった。

綺麗な顔立ちも
優しい笑顔も
何かを考えている遠い眼差しも
誰にも真似できない傀儡を作る技術も。


傀儡部隊に入ったのだって、幼なじみの貴方がいたから。

両親の代わりにはなれないけど、少しでも支えになりたかった。



なのに、

25年掛けてやっと見つけたあんたは


『…』


辺りの壊れ方からすると相当派手に戦ったのだろう。

岩々の上に眠っている幼い男の子。

それはまるで殻だけになったかたつむり。



『髪の毛…相変わらずサラサラだね、天パだけど』


私にはすぐにわかった。

これがサソリだということも、ただの抜け殻ではなくて、彼が死んだということを。



『サソリ…強いのに。なんで、なんで…!!』


彼の抜け殻を抱きしめても反応はない。

涙が抜け殻にポタポタ落ちる。



『力になれなくて、ごめんね…好きだよ、今もずっと』













14の時、ニヤリと笑いながら彼は言った。

「名無しさん、傀儡にしてやろうか」

と。
激しく断ったら、年を取ることも痛いこともなくなるのにって寂しそうに言った。

何より傀儡になればずっと一緒に居れんだろって…



あれ、何でそんなこと言ったの?



















「お前を傀儡にしときゃ、良かったな…」

『えっ…』


風と共に聞こえた声に、サソリを見ると抜け殻の口元がふっと笑った気がした。



どうしてあのとき、傀儡にならなかったんだろう。

どうしてもっと早く見つけられなかったんだろう。



もっと一緒にいたかった

今更、両思いだったって気付くなんて



次はきっと、平和な時代になるよ。

私が平和になるように頑張るから。




だから



『次に生まれてくるときは一緒に幸せになろうね、サソリ』
 

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