NT
□好きなんだもん
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『あのねー、今日鬼鮫と一緒にご飯作ったんだよ!』
「へー」
『…私の話、聞いてる?』
「おう、そうだなー」
そういう飛段はネックレスを綺麗に拭いている。
『全っ然聞いてないじゃない!もう、いい。』
彼のベッドの上に座っていた名無しさんは、バッと立ち上がり扉の方へ歩き出そうとした。
すると、急に腕をひっぱられてトスン、とベッドにダイブ。
上向き状態で着地をした瞬間、見えたものは天井ではなく飛段の顔だった。
「お前、どこ行く気だ?」
『え…別にどこだっていいでしょ!』
「よくねぇよ、」
『…サソリか、小南姉さんの所か…それか』
「昨日、デイダラちゃんの部屋に行っただろ」
『…行ったけど』
「おまえは俺の女だろ」
飛段は柄にも合わず真面目な顔をして下にいる名無しさんの目をしっかりと見た。
『飛段が相手してくれないからだもん。それに、デイダラとは粘土で遊んだんだよ、サソリは迷惑そうだけど為になる話とか聞かせてくれるし…』
「俺だって、ジャシン様にお祈りした後はいつも可愛がってやってんだろ?!正直よぉ、イラつくんだよな、その他の男となになにした〜みたいな話」
『…だって、話題が無いから、でも飛段と話したくて、』
「男の話以外なら俺はちゃんと聞いてるぜ?」
『…言われてみれば』
ふっ、と飛段の顔が少しだけ穏やかになり、さっきの緊迫した雰囲気が少し和らぐ。
『私ね、暁のみんなが大好きなんだ。でも飛段は特別で、飛段だけは違う好きなんだよね、だから…』
「…俺よぉ、男のくせに情けねぇな」
ゲハハではなく、ハッ…と笑う。
そんな彼の表情を見たら、申し訳なさと、違うよって気持ちと愛おしい気持ちなどで胸がいっぱいになり、彼がベッドについている手をガッと離し、おわっ、と倒れてきた飛段の唇をそのまま奪った。
名無しさんからこのようなことを求めることは、一度も無かったのでさすがの飛段も一瞬慌てる。
少ししてから唇を離した。
『そんなこと…ないよ。ごめんね、私飛段の気持ち考えなくて』
彼はガシガシと名無しさんの頭を撫でて、
「お互い様だぜ、ホント」
といつもの顔で笑った。
大好きなあなたに、どんな話しも聞いて欲しいの。